本格戦記の──昔語り。

美しい物語。哀しい物語。命のまことの物語。
奥三河の奥平一族の、今は歴史の影に埋もれてしまった、一人の女性の真実を描き出します。
真実、と私は言いました。
ええ、言いましたよ。

史実を下敷にしていますが、架空、と作者さまはことわりを入れています。
しかし、主人公の女性が生きた真実に、読者は触れる思いです。

そして、武家に渦巻く陰謀、本格的な戦が描きだされます。
これは戦記物ではない、昔語り、と作者さまはおっしゃいますが、迫力ある戦がたっぷり描かれた、骨太の歴史絵巻です。立派な群像劇です。

読了後の満足感、胸にあふれる、透明な哀しさの量が半端ありません。

あと、特筆すべきは、共寝のシーンが素敵です。
琴の音が鳴り響くような美しさです。

歴史物がお好きな、万人むけの物語です。

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