着眼点が鋭い。そしていやらしい。
この作者様は、大変歪んだ良いセンスをお持ちだ。
個人の都合でまだ数話しか読めていないけど、そのどれも良い意味で胸糞悪い話ばかりだった。
毎日、3つのお題と1つのテーマを軸に短編を書き続ける。
硬いがすっと頭に入ってくる文章、そしてあっと言わせるオチ。
「どんでん返し」ではない。
ただ、並の人間には思いつかない深淵な結末が毎回見られる。
素晴らしい。
個人的には、日々の生活の中で空白の時間が出来た時、「退屈だな、何か読みたいな」という瞬間に開きたい作品群だなと思った。
小さな単行本をポケットにしのばせるような。
そしてきっと、本人が豪語されるように、このお話は毎日どんどん面白くなるんだろう。
実に期待が持てるポテンシャルをお持ちの方。
正直、今ここで読むか読まないか悩んでいるあなた。
一読の価値、絶対ある。
拝読させて頂きました。
三題噺というアイディアにおどきました。
コボちゃんの四コマ漫画やり方と一緒ですね。
著者の腕、研鑽の日々が積み込まれたドキュメンタリー作品のような気がしました。
これは誰にも真似できない作品です。
気になる点
どうしてもこの作品はアイディア出し、文章構成の練習のような気がしてしまいます。
これはこれで素晴らしいですが
これだけ書ける人の本気の一本作品が観てみたくなりました。
企画上でなかなか全部読みきれず、
理解が足りてない部分があります。
御理解頂けると助かります。
改善点は軽い参考程度に考えて頂けたら幸いです。
偉そうに意見しまして大変申し訳ありません。
執筆活動は大変だと思いますが微力ながら応援しております。
誰よりも海水を飲む人
最近ハマってるなんでもありの短編集。作者の知識と作風が豊富で面白い。ちょうど100話まで読み終わったところだけど、怒涛の更新頻度と一話一話が濃密なのとで全然最新話に追いつけない。嬉しい悲鳴というやつだと思いますが。
全話制覇目指してるけど、一話~数話だけ拾い読みもアリだと思う。100話まで読んだ時点でのオススメは
【不思議部門】第三十六夜『アビゲイル、アビゲイル-Sister’s Love-』第十一夜『生存者の記録-dead on Commedia-』
【男同士のエモ感情部門】「第八夜『自称天才鳥使いの俺、勇者一行から役立たずと追放されるも、今は宮廷鳥匠となって第二の人生を歩む。今さら遅いが、頼むから戻って来てくれと俺に言ってくれ-Nike-』
【切ない部門】第十八夜『うちの学校の池に人魚が居た-Immortals-』第六十九夜『鬼の目にも涙-Blood Sweat and Tears-』
【お笑い部門】第六十六夜『君の一番怖いもの-her-』
【SF系部門】第十六夜『現代物理学並びに量子論から見た時間の連続性に関する仮定と命題-Clap Your Hands-』第五十三夜『ある愛の形-AI-』
難解で上手く理解出来たかわからない話や、話によって自分の好みかどうかの差が結構あったりするのも逆に面白いです。色んなタイプのお話を読みながら自分の好みと向き合える面もあると思います。私はやっぱり暗いでも重いでもなく切ない、寂しい話が好きなんだろうな。(オススメに挙げた作品も、分類分けしてみたけどもお笑い部門以外はそんな感じかも)
シェヘラザードは一晩で王に飽きられて殺されないために、物語を千一夜も王に語ったとされ、それがもとで千夜一夜物語が誕生した、という伝説がある。
それらは現代において文学となり、アニメや演劇となり、アリババやアラジンを代表に人気を博しているが、一方でこの伝説自体は全くの虚構であることも分かっている。
物語はアラビアの民話を集めたものであるし、この千夜一夜分という量も、欧米人がこの話を知った時、本当に千夜一夜分あるものだと思い、無理くりかき集めて形にしたものだ。
シェヘラザードとこの作品が似ているのは、単に毎日即興で物語を作っているという点だけではない。
三題噺という落語から生まれた話芸を文字として表現するのは、シェヘラザードが語ったとされる物語が文学となる過程に似ている。
実際この作品を読むと、ただ長々と語るのではなく、口に出すことで生まれた物語を文章として書き記したような、そんな読み心地のある文体である。
一方で、この作品がシェヘラザードと違うのは、一話で一夜を明かせるほど長くはないということだ。
この作品自体が面白い短編の数々であるが、三つの題目がどこに登場するのか、短くスパッと終わるために、次へ次へと読者が話を読ませたくなるような、落語家が客を飽きさせずに話し続けるために取る刻みの良いリズムが存在している。
もしこの作者がアラビアの乾いた砂漠によって伝説を真似するだけならこうはならない。ただ千一の物語をかき集めるための備忘録ではない。
日本での文化の潮流を受けたからこそ、宵越しの銭は持たないように、夜を越せるほどの物語でなく、その場の切れ味を最大限見せつける作品集だと感じた。