ガラスの魔女は復活できない。

静謐な早朝の教室で、二年前に死んでしまった魔女のことを思い浮かべていた主人公、三上春間。
生産性の薄い毎日を繰り返していたある日、突然宝石が転がり落ちてきたことで、彼の日常に非現実が混ざりはじめる。

浮かび上がる『魔法』。
ヒトの価値観を狂わせるソレは、手にした生徒たちの欲望を露わにした。
ばらまかれる鬱憤、色濃くなる正義感、同居する残虐性。
三つの宝石を巡り、騒動は不鮮明な被害を出しながら、刻々と動き出す。

ある者は、他者との平等を願った。
宝石は刻まれた数字を減らし、願いを叶えた。
ある者は、自分だけの正義を求めた。
宝石は刻まれた数字を変えて、手段を与えた。

そして、最後のひとりである三上は――。

名も顔も知らぬだれかとぶつかりあう宝石騒動。
それは、手放したはずの感情が奇跡を…続きを読む