後悔を晴らすための一途で真っ直ぐな想い

 途轍もない絶望が訪れた人生をやり直せるとしたらどれほど本気で日々を過ごすだろうかということを考えさせられるような物語です。
この作品では、主人公のそのやり直したいという意志を支えるのは愛する人への思いひとつだけ。もちろん、そのやり直しの過程で新たな大切なものを手に入れ、本当の自分の人生ではないとしても、その日々を守りたいという思いを強くしていく様は人生の広がりを描いているようにも感じられ、人を越えた人間の人生というものをまざまざと見せつけていくようです。
 人の志は、たとえ自分自身が半ばで力尽きたとしても、同じ思いを抱いた人が未来で事をなすという夢に託すことで継がれていくものですが、バトンを自分自身で受け渡すことによって、ある意味では主人公はやり直しの宿命から逃れられない状況になってしまっています。そういう宿命すらも未来を変えるという原動力に繋げて行ける主人公の心や意志の強さに勇気づけられます。
 そんな主人公を見守る家族からの愛も見逃せないところで、それぞれが様々な形で主人公を支えていきます。そういった恵まれているともいえる環境ではありますが、だからこそ、それは未来を変えるという大いなる目的を見失いがちな誘惑にもなり得ます。そういう誘惑とは一線を画す主人公の想いもまた愛なのだと感じます。

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