まず語り口がいいなと思いました。おっさんとしては定番の無気力系かもしれませんが、この世界観を過不足なく反映した雰囲気の良さがダラダラと耳を傾けていたくなるような、おっさん特有のちょっとひねくれていてなおかつちょっと笑っちゃうような空気感がよく表現されています。「やれやれ系」の頃の少年が大人になるとこういう感じになるのかなと感じます。
無気力なおっさんですが、教師として未来ある子どもたちを愛する心は捨てておらず、その根本には戦争と義妹との出会いがあり、「頑張らない」とか「波風立てない」とか言いながらも、芯に意志の強さを感じさせる背景があるのもおっさんのキャラに深みが出ていていい感じです。平均寿命50歳、おっさんの目にも最期の時がよぎることがあるかもしれませんがそれが哀愁ある諦めとか、達観した視点を浮き彫りにしています。魔法使いとして有能な片鱗や、おそらくは魔法好きだからこそつい魔法のことになると語ってしまうところに少年のような稚気もあり、魔法が絡んでくるであろう今後の展開に期待感が高まります。
メインキャラとなる同僚の教師や義妹のキャラもどこか人間味があって、この世界に息づいている感じがして親近感が湧きます。
あれよあれよという間に成り行きに任せて事が進んでしまうのですが、それもおっさんのなせる業で、たぶん私はこのおっさんに相当肩入れしてるなと感じる次第です。
これは後の布石だと思って勝手に期待しているのですが、随所にメタレベルの発言があり、これが現実世界とリンクする物語へと変貌するんじゃないかと感じています。
主人公・グラルは35歳のいわゆる「おっさん」。
剣士や魔法使いではなく、カランコエの学校の「国語教師」を務めています。
彼のモットーは『頑張らない』、人生にはヤマなしオチなしという事で、起伏のある人生を求めていません。平坦な人生が彼の何よりの願いです。
ところが、そんな彼の思いとは裏腹に、様々なトラブルが彼に襲いかかりますが、魔法メインで冷静に対処していくグラル。
淡々としていてかっこいいです! そして、弱者に優しいんですよ。
そんなグラルのどこか悟ったような、それでいて軽妙な一人語りがコミカルで、物語の世界にぐっと引き込まれていきます。
そて、グラルの周辺に登場する様々な美女。
私のイチオシはグラルの義妹のガーネットです。金髪翠眼の美人エルフで、元気で明るく、しっかり者な所が可愛いです! そして冒険者なだけあって強い!
ガーネットの戦闘シーン、躍動感があります。
好対照の性格であるグラルとガーネットのテンポの良い会話も、この作品の魅力の一つです。
とかく「成果主義」を求められる昨今ですが、「普遍的で平坦な人生」もまた我らの願い。
肩ひじ張らずに等身大で生きていても、ピンチの時には持てる能力とベストを尽くして淡々と対処する。
そんなカッコイイ主人公の物語、ぜひ読んでみてください!