たった1つの確かな想いを胸に、いつか剣聖と呼ばれるようになる少女の物語

 ある日、主人公が思い出したのは10年後の“未来の前世の記憶”。当時の自分は非力で、救ってくれた恩人を守ることができず、無念の中死んでしまっていた。そこで主人公は、かつて自分が救えなかった恩人の少女を助けようと決意する──。
 そんな、いつか剣聖と呼ばれる少女の努力の日々を描いた物語。

 未来を思い出す、という変わった始まりもさることながら、本作の魅力はなんと言っても主人公の女剣聖。
 彼女が前世の記憶を思い出すところから物語は始まるのですが、恩人である公爵令嬢を助けられるように努力する姿が何より魅力的です。

 前世の自分と違い、“剣聖”としてある種、最強の人物となった主人公。ですがその才能に驕ることなく手のマメを潰しながら剣を振り、魔法の知識を得るために師事できる人物を探す。また、公爵令嬢どの繋がりも無いため人脈作りにも励んだり…。
 今度こそ守り抜いて見せる。そんな強い意志のもと積み重ねられる努力が、丁寧な内面描写とともに描かれています。自然、読み手である私の主人公への共感が高まっていって、報われてほしいという期待感を持つことができました。

 そして、そんな彼女の努力が報われるの一章の後半。お茶会に魔獣(魔物)との戦闘。どちらにも「慕情」や「自信」、もちろん日々の鍛錬で鍛えた「体力」など、主人公が積み上げてきた“これまで”が生きていて、思わずグッとなりました。

 両親や従者など、登場人物たちも嫌味が無いためストレスなく読み進めることができたのも印象的。前へ進もうと努力する主人公を支え、ときに背中を押して見守る。どこかホッとするような温かみも、より主人公を魅力的に見せてくれた要因なのかもしれませんね。

 確かに主人公は生まれたときから剣と魔法の才に溢れた剣聖。
 ですが、案外、恩人である公爵令嬢のために。そんな熱い想いのもと、愚直に努力を重ねられるそんな才能こそが彼女を剣聖に“する”のかな。思わずそんなことを考えさせられる素敵な作品です。
 過去だけでなく未来すらも糧にして、果たして主人公は公爵令嬢を護り切ることができるのか。2人の“これから”に期待です!

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