革命のために授けられた〝ゴミスキル〟

 とにかく、何かモニター越しに湿った空気が伝わってくるような作品であることは間違いがなく、それが並み居る女性たちを翻弄するひとりの少年の手によるものという特筆すべき異常性が面白いところです。その少年の戦いはすれ違いコントのような様相を呈するどこか間の抜けた流れに思わず笑ってしまいます。
 世界観の根底には、性差や上下などの差別意識にまみれた社会が描かれており、人によっては社会を凝縮したような感覚を抱くかもしれません。その中で、ひとりの少年が差別構造自体を破壊するかの如く邁進するのですが、飄々とした様子が超然としていて、それは逆に歴戦の猛者みたいな風格すらあり、普段なよなよしている少年のギャップに頼もしいと思わせられてしまうのがすごいです。
 戦うべき相手が女性ということで、授けられた〝ゴミスキル〟はまさに革命を促すかのような代物で、それを手に入れた少年はまさに主人公として存在するに相応しいのかなと感じました。このスキルを持った彼以外に主人公はあり得ないと感じさせてくれます。
 個人的には、行われていること一線を画すような地の文の何か淡々とした響きがすごい温度感のギャップを生み出していて、そのミスマッチが面白く感じました。この物語世界と私たちの現実世界の仲介人のような語り手がバランスを調整しているかのようで、一見すると下半身で考えられたような雰囲気の作品であるにもかかわらず、きちんと理性的なストッパーが存在していて、むしろ誠実さすら感じました。

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