『テンプレ』ではなく『王道』なチートハーレム無双ファンタジー!

何の落ち度もないのに冒険者パーティを追放されてしまった『カイツ』は、悪人に囚われた獣耳の少女『アリア』と出逢い、そして彼女と共にヴァルハラ騎士団の一員となる。カイツを慕う元仲間達や騎士団の面々、そして常に寄り添う狐耳少女といったヒロイン達と共に、彼は数々の任務を最強の力で乗り越えていく――。

最初はタイトルやあらすじの時点で、正直「既に何千何万と投稿されているような小説達と同じような内容かな」と予想、悪く言えば不安を抱いていました。しかし実際に読んでみると、少なくとも無個性でつまらない作品ではありませんでした。
強さと優しさを兼ね備えた主人公カイツは不快感がなく、魅力的で個性的なヒロイン達も多数登場します。
更に作中で大きなウェートを占めている戦闘シーンは、文章に破綻や違和感がなく、派手さと疾走感を感じることができます。どのバトルでも『似たり寄ったり』といった印象を一切抱かず、読者を飽きさせない工夫や数々の名勝負を描きたいという作者さんの心意気が伝わってきました。
追放、無双、ざまぁ、ハーレムといった昨今主流の素材を取り入れつつも、作者さんオリジナルの味や調理技術が加わっており、この手のジャンルが好きな読者には「面白いよ」とノータイムでオススメできるクオリティでした。一定以上の水準に達している良作Webラノベだと思います。

ただ、戦闘シーンの迫力や緊張感は良いのですが、全体的にバトル要素が多いためか、ハーレム要素の方はちょっと薄めなのが気になりました。
多くのヒロイン達が登場するものの、誰か一人とイチャイチャしているシーンでは、その子以外の他ヒロイン達とは交流できません。そのため、どうしてもそれぞれの出番が薄まっている印象でした。『複数ヒロインとの交流・ハーレム』というよりは『一対一の交流・ラブコメが相手を変えて連続する』といった感じです。そこだけは勿体なかったかなと思います。
とはいえ、そもそも複数ヒロインを同時並行で活躍させたり魅力を発揮させるのは、超絶難しい技術なので仕方ないとも言えますが……。

しかし作品全体を通してテンポが良く、各章も長すぎず短すぎず『中だるみ』しないため、それぞれのヒロインにスポットライトは当たります。
そしてストーリーの内容やカイツの出自など、今後の展開で気になる要素も盛り沢山です。序盤で気に入った人なら作品の魅力に惹き込まれ、最後まで読み進められるだけのパワーはあると感じました。予想以上に面白かったです!