個性的なキャラが生む甘さと、戦闘の熱が癖になる。中毒性のある作品です!

 ある日、パーティメンバーの男にパーティを追放されてしまった主人公。失意にくれる彼に追い打ちをかけるように襲い来る様々なトラブル。気が付けば、彼は牢に囚われの身となっていた。その牢で彼が出会ったのは頭部に動物の耳を生やした少女。彼女との出会いをきっかけに、彼は己の使命を再確認し、再び立ち上がる。
 やがて彼は騎士団に所属し、弱きものが虐げられることのない世界を目指す──。

 本作の魅力はやはり、個性的なヒロインたちと手に汗握る戦闘シーン。

 次から次へと登場する個性的な女性キャラクターたち。猫耳ヒロインはもちろん、腹に一物抱えていそうな団長さんや、戦闘狂のお姉さん、若くしてバツ40の同僚に、語尾が個性的な味方や敵などなど…。次はどんな子が出てくるのか、どんなふうに主人公に絡んでくるのか。そんな期待が絶えず押し寄せてきます。
 しっかりとキャラ立ちがしていることもあって主人公との掛け合いも心地よく、ときにほっこり、ときにわくわくしながら交流するキャラクターたちを見ていられました。

 キャラの外見や背景、情景描写は程よく最低限に収められていて、読者に想像の余白を持たせてあります。おかげで、先に挙げたキャラクターたちがまとう空気感も相まって、物語全体をほんわかとした雰囲気が包んでくれています。それが「追放モノ」にある暗く重いいシーンをうまく中和してくれていて、読みやすくしてくれていた印象でした。

 一方で、戦闘の描写はしっかりとなされています。主人公を含めたキャラクター達が己の個性を使って奮闘し、技名を叫んで獅子奮迅の活躍をする様も本作の魅力。
 手に汗握る戦闘。チートな力持っていても1人で出来ることには限界があって、それを仲間や“相棒”と一緒に補い合う。そこにもキャラクター達の関わり合いと信頼が生きていて、どの戦闘も単調に収まらない工夫がなされているように感じました。
 もちろんチート作品ならではの爽快感もあります。各所で繰り出される技は格好良くて、戦闘の熱をより盛りたててくれます。

 ほわっとしたキャラや世界観と戦闘が良い対比になっていて、白熱したバトルシーンとキャラクターたちとの日常シーンが互いに引き立てあっていた印象です。

 個人的には主人公の「弱者が踏みにじられない世界を作る」という青臭くも夢がある理想が好きです。
 途中示唆されていた、彼が自信を喪失したわけ。他にも、主人公を追い出した、どこまでも無能に描かれている“彼”がなぜ思い上がることになったのか。その“彼”がやがては主人公を追い出すわけですが、常識人に見える他の仲間やギルド職員が諌めなかった理由。その辺りの元仲間たちの背景が特に、気になります…!

 成人サイズのゴブリンの大群を退治したり、異世界の異世界に行ったり、主人公の所属する騎士団からの依頼はあとを絶えません。
 魔法はもちろん、異種族、精霊(?)、妖精、淫魔といった異世界ならではのファンタジーを味わいながら、ヒロイン達との甘さのある日々に酔う。その酔いを、熱いバトルシーンで覚まし、また異世界に酔う…。酩酊感にも似た不思議な中毒性のある作品。

 「たくさんの女の子と、格好いい主人公の活躍が見たい!」

 そんな方には特におすすめしたい作品です!

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