パーティーを追放されたギルド最強の少年は騎士団で無双し、英雄になる
デウス・オーディン
プロローグ
【私はこの世界を変えたい。弱者を踏みにじり、ふざけた奴らがいないような世界を作りたい】
いつか聞いた彼女の言葉。俺はその理想を叶えるため、戦い続けることを誓った。冒険者の仕事は、そんな理想を叶えるのにうってつけだった。今ではギルド最強とまで呼ばれ、パーティーにちゃんと貢献出来ていると思っていたのだが。
「カイツ。てめえは俺らのパーティーにいらねえ。追放だ」
それは、いつも通りみんなで冒険を終えたある日のこと。俺は宿の一室で、パーティーのリーダーを務めている勇者アレウスにそう宣言された
「な、なんでだよ。理由を教えてくれ」
「そんなの簡単だろ。てめえが平民で、ただの金食い虫だからさ」
金食い虫。つまりは役立たずということか。自分なりにこのパーティーに貢献出来ていたと思っていたのだが。
「俺から見れば、お前は役立たずの寄生虫だ。金も身分も能力も無いただの平民。ギルド最強だかなんだか知らないが、お前が入ってから、うちのパーティーは動きが悪くなってんだよ」
「そんなはずは……ギルドのみんなからも、俺が入ってからみんなの動きが良くなったって聞いてるし、リナーテやメリナも」
「あ? 高貴な貴族である俺の意見に平民のお前が異を唱えるつもりか? 俺が間違ってるとでもいうのか、このカスが!」
そう言うと、彼は酒の入った瓶を俺に投げつけてきた。瓶が割れて破片が顔を傷つけ、中の酒が俺の体を濡らす。
「良いか? 有象無象がなんと言おうが、パーティーのメス共がなんと言おうが、俺の言葉が正義なんだよ。高貴な貴族である俺に間違いはない。てめえは金食い虫のカスで、何の権力も持たない哀れな平民なんだよ!」
反論したかったが、彼は聞く耳を持ってくれなかった。俺の意見がなんであろうと、追放されることには変わりないようだった。
「てめえはこのパーティーから追放だ! 薄汚れた平民の顔を見なくて良いってなるとスカッとするぜ。無能で貧乏臭いお前は、存在するだけで俺を苛つかせてたからな。」
「……分かった。足手まといになってすまなかった。もうお前たちの前には現れない。今まで、仲間でいてくれてありがとう」
俺はそう言って頭を下げた。反論したところで話を聞いてくれないだろうし、俺ができることはこれしかなかった。悔しいな。みんなのために実力をつけ、ちゃんと貢献出来ていると思っていたが、それは俺の思い込みだったらしい。
「カスの謝罪なんざ、見てて気持ち悪いんだよ! 死ねや!」
彼は料理が残っていた皿を投げつけてそういった。皿は俺の頭に当たり、欠片や料理が俺の顔や頭に飛びかかる。
「そうだ。この際だしギルドもやめろ。お前みたいなカスがいると知られたら、家の評価が下がっちまいそうだし、お前がここにいると考えるだけで吐きそうになる。俺の精神衛生のためにも、ここを辞めろ。それに、リナーテやメリナもお前のことは大嫌いみたいだからな。あいつらよく言ってたよ。お前みたいなカスがいると飯がまずくなるし、耳や目も腐りそうになって吐き気がするってな」
嘘だろ。彼女たちとはそれなりに友好な関係を結べていると思ってたが、それは俺の勘違いだったというのか。
「……分かった。ギルドを辞めることにするよ。もうじき出ようと思ってたし、ちょうど良かった」
俺はそう言って部屋を出ていく。部屋を出ると、彼の笑い声が響き渡っていた。
「ギャハハハハ! これでようやくおさらばできるぜ。あいつの顔とか実力はマジで鬱陶しかったんだよな。無能な平民の癖に無駄に目立ちやがって。つーか出ていくときの顔最高だったな。落ち込んでて今にも泣き出しそうで笑えたよ。ギャハハハハ! 何が仲間だ。そう思ってたのはお前だけなんだよ。ゔぁーーーか!」
俺を追放出来たことが余程嬉しいのだろう。彼は嬉しそうにゲラゲラと笑っている。まあ、嫌な奴と離れられるってなると、嬉しくなるのは当たり前だよな。俺は彼にとって相当嫌な奴だったらしい。
「……はあ。上手くいかないものだなあ」
パーティーに入った一番の理由はお金稼ぎだ。俺はわけあって1人旅をしているが、旅を続けるための金が無くなってしまった。稼ぐ方法を探していたところ、彼らに拾われた。しかし、俺が弱くて情けないせいで迷惑を掛け、捨てられてしまった。一応、ここを出て旅をするだけのお金はあるから良かったが。
「他のメンバーに挨拶は……しないほうが良いか」
俺たちのパーティーにはあと2人の女性メンバー、メリナとリナーテがいるが、彼女たちには挨拶をしないほうが良いだろう。俺を見て吐き気がしてたらしいし、会えば迷惑をかけてしまうかもしれない。それに。
「また何か言われるのも辛いからな」
信じていた仲間に罵倒されるというのは、思った以上に精神に来る。正直、また罵倒されたら心が折れてしまうと思う。お互いのためにも、挨拶せずに別れるのが良いだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます