桜の木を通じて語られる日々のすべてが心に響く。
- ★★★ Excellent!!!
とてもとても素敵な物語だった。
短い物語の中で、これほど心が動かされることも中々ない。
語り部である桜の木は勿論、出てくる人物がみなとても愛おしい。
煌びやかな青春、切ない恋心。桜の木を通じて語られるそうした日々のすべてが心に響く。
ジャンルでいえばファンタジーなのかもしれないが、そうしたジャンルに馴染みがない読者の心にも響くと感じる。それは、しっかりとこの物語の中に、キャラクターが生きているからだろう。だからこそ、恋を微笑ましく思うし、叶うことのない気持ちに切なくもなる。生きているからこそ、その感情が単なる表現としてではなく、読み手にも伝わる。
ラストもとても良い。切ないけれど、素敵で優しいその幕引きは、とても心地よい読後の余韻を生む。
とても美しく、優しく、素敵な作品。