一次創作一口名言置き場

 
 先ず三話、読ませていただきました。
 長くはなりますがご了承ください。

 感想から述べさせていただくと、一次創作一口名言置き場、である。
 これ以降、私の感じた話になりますので面倒であれば読み飛ばして下さい。


 面白い試みである、と私は思った。記載されている言葉のうち、何作か気になったセリフがあったのでぜひとも取り寄せて読んでみたいと検索を掛けたところ、どれもこれも、ヒットせんのである。空打ちばかりだ。呆然とした。なるほどこれらすべては創作か。そのくせ、一作一作、セリフの回し方や作風の違い、雰囲気にメリハリがあり、同一の作者がかかれた創作物の世界とは思えん奇妙な心地があった。ちゃんと、まばらな作品として存在しているのである。

 さて、一話から三話までの感想を書かせてもらうわけだが、この場は気になったセリフあるいは引用を引いて私の感じたことあるいは書かせていただきたい。
 何はともあれこのレビューを視る読者諸賢。存外くせになるものがあるぞ、暇があれば手に取るとよい。時間はそうかからんものばかりだった。他人の手垢に塗れたつぶやきを見るより有意なひと時になることは間違いない。



 第一話

 3 この一節、某物語の某貝木さんを思わせる言葉である。そうだとも。偽物の演じる本物は、筋が張って泥にまみれて花がない。だがそれでも花であろうとする心こそが、本物に勝る点である。本物は枯れるが、造花は枯れん。この差は大きい。役者はなんにでもなれるのだ。本物では成れない、あらゆるものに。

 10 之は真理。私も人の小説を評価するときには自分では表しようのない点ばかりに目移りするのである。そして褒めようとするならその点が真っ先に出る。

 15 この虚言師という作品読んでみてえ……。親密な関係の作り方と、搾取するためだけの関係の作り方は似ているものだ。枢要な点は信頼と信用を築くこと。したらば、後はハンドルを右に切るか左に切るかの違いで区別ができる。

 16 口元が緩むとは何も破顔だけの話じゃない。会話で開かれた喉の蛇口の栓は、適量締めとかないと余計なことまで駄々洩れてしまうものである。

 17 探偵ミサキハルカの日常シリーズ多分実際にあったら面白い。
 普通とはマジョリティの生み出した大枠の型である。差別の根源とも言ってよい。これが為、ヒトは健全と異常に分かれた。
 マイノリティの尊重だと? 馬鹿を言え勝手に壁を設えて、外側に追い出したのはお前ら集団思想崇拝者共だろう。何を今更、救いの手を差し伸べる体で言う。その手はそんなにキレイなものか。

 20 雨の色。これも名作な匂いがする。鉛筆も消しゴムもあるいは紙も、替えは聞くものだ。しかして時間ばかりはどうにも、替えが利かん。遡及もできない。世界を完成させてしまうことだけは、修正もやり直しも効かないものなのである。



 第二話

 22 急にほのぼのとする世界感の話が出てきた。こはる日記。実際に在りそうなのがまた興味深いのである。

 27 銀杏の雨。隠れ名作そう。この一節だけで主人公の身に燻ぶる罪悪感だとか善行を信じて疑わぬ方寸が透けて見えるようである。何かしらのアクション後は、自己肯定したいものだ。行ったそれがどうであれ、自分はきっと間違えていないものだと。

 32 探偵ミサキハルカの日常である。一寸待ってた。腸捻転とかいうまあ危なげな状態で病床に臥しているらしい。地味にこの話が一番気になるまである。

 40 タイトルが黒歴史。ほいで内容がサークルの飲み会の幹事に抜擢される話である。もうこの時点で身震いするような嫌な予感がする。



 第三話

 41 お嬢ちゃんは交換日記を愉しんでいるようだ。恥ずかしがりやの誰かさん。姿は一度も見たことがない。ほのぼのとしているいい話だ。ただ一点、その相手が押し入れに潜んでいることに目をつむれば、だが。怖ッ。洒落怖。

 42 先ほどの黒歴史の作品の続編だろうか。何と言えどもタイトルの所為で地雷を踏む作品な気がしてならない。この美人店主とはいやな別離の仕方をしてそう。

 43 茶殻を夕飯のおかずにすると言う貧乏性に苦々しい笑いが出た。貧困は鳥の筋張った脚にすら味を見出すとされる。渋みの出枯らした茶殻からは大層澄んだ味が染み出ることだろう。

 46 たまに来るこの『達磨と蛇』という作品が見た過ぎる。セリフ回しとか雰囲気とかが良作の臭いしかしない。本物とは、本物であり続けることを余儀なくされる。その中途でよそ見は一切許されない。偽物になりすますなど、言語道断である。

 47 いじめかあるいは干渉を許さないなにか別の出来事か。見ないふりをするしかない作品であるらしい。魚言葉が薄目張。薄く見張ってる。魚言葉にみないふりを持ってくるところオシャレである。

 53 あー恐ろしい恐ろしい。長い事恐ろしい話を聞き入ってしまいましたが、今まさに聞かされている話が一番恐ろしい限りであります。
 どうなってしまうのでしょう、その話の最後。気になって落ち着かんのでございます。



 統括と行きたい。

 全体的に質がいい。質が良すぎる。どれもこれも実際に扱われていたような一節みたいなものばかりで、一つ一つ場面を想像しながら読むのが楽しかった。いくつか、ちょっと考えさせられるものもあった。思考を促す文言もつづられてあるのは推せる所。
 何作かは実際に読んでみたい作品がある。欠点をいうと、どの作品も実在はしない、架空の話である点だ。この点、覆しようのない空虚を思ってしまう。


 さて、私の感想は、一次創作一口名言置き場、である。

 恥ずかしながら私もこういった架空の作品においての思わず目を引く格言のようなものを考えてしまう癖がある。意外とこれ楽しいのだ。伝えたいことが山ほどあって、しかし一言一句で結ぶと途方もなく長い文句になってしまうとき、この作品のようなスパッと物の穿ったセリフを吐ける、そんな脳みそを作っていきたいものである。
 さてもこの作品群、在りはしないけれどしっかりと下地の存在を匂わせるに至る充溢した雰囲気があった。
 
 大変面白く読ませていただきました。
 応援させていただきます。

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