恐怖!! とあるラノベの非実在風紀委員

@HasumiChouji

恐怖!! とあるラノベの非実在風紀委員

「おい、てめぇ、何、勝手に俺のPCを……」

 俺は、正月に里帰りした妹に向かって、そう叫んだ。

「兄貴さぁ……家族にでも見られたくないファイルが入ってるPCを、何で、自動ログインにしてるの?」

「うるせえッ‼ 何、非論理的な事を言ってやがるッ‼ これだから女は感情的だって言われるんだよッ‼ はい、論ぱ……今、何って言った?」

「見られたくないモノが入ってるPCを自動ログインにすんな」

「あ……」

「あとさ……あんなバレバレなペンネーム使うな」

「な……なんの事だ?」

「『小説家をはじめよう』の『古川リョウ』って兄貴の事だろ?」

「な……なんの事だ?」

「バックアップのファイルが、このPCの『ドキュメント』フォルダに有った」

「う……うるさい……」

「しかし、下手な小説だね」

「新人賞の選考は通ってる……まだ、賞は取れてないけど……」

「十五回連続で、二次選考で撃沈だっけ?」

「何で知ってる?」

「何日か前に酔っ払って暴れた時に口走ってた、って父さんと母さんが言ってた」

 あわわわ……し……しまった。

「ついでにさ……この新作の悪役の女の子、モデル、私だろ?」

「え……えっと……」

「あのさ……学校の風紀委員って、この小説に書かれてるような事しないよ、普通は」

「な……何を言ってる?」

「私も高校の頃に風紀委員やってたけど……駐輪場の整理や、登校時の……」

「ああ、だから、その小説の風紀委員の糞メスガキも登校時の服装チェックを……」

「……私が風紀委員だった頃にやってたのは、登校時の交通安全の呼び掛けだけど……」

「はぁ? い……いや、お前の行ってた高校がおかしいんだ。普通は風紀委員は……」

「現実の風紀委員は、ラノベに出て来る良く有る風紀委員みたいな事は、普通はやらない」

「やる」

「普通はやらない」

「お前の行ってる高校が異常だったんだよッ‼」

「水掛け論になるから……聞くけど、この風紀委員のやってる事……どうやって思い付いた」

「俺が風紀委員にやられた事だよッ‼ 散髪に行くのを忘れたら丸刈りにされ、詰襟をちゃんと止めてなかったら『服装の乱れは心の乱れ』だって1時間以上も吊るし上げられ……」

「兄貴……兄貴の体験って時点で変に思わなかったの?」

「何がだ?」

「そりゃ、兄貴のラノベに出て来るみたいな戦時中の憲兵隊みたいな『風紀委員』が居る学校だって有るだろうけどさ……」

「ほら、俺のラノベの風紀委員が有り得るって認めたなッ‼」

「いや……だから……退?」

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