吸血鬼の悲しい性を優しく包み込んで料理した新感覚のヴァンパイア作品☆

美味いものを食べた時、「ほーん」みたいな鼻に抜ける声を上げたことはないだろうか。作中に登場した料理の数々は、どれもそんな美味しさが漂っていた。しかし、主人公の男は全て食べることができない。口にできるものは「血」だけという吸血鬼だからだ。
そんな彼が、クラシカルなセーラー服を着た女学生を保護した。紅子と名乗る彼女は、彼の振る舞う料理に懐き、次第に距離を縮めてゆく。その過程で、彼は自分が吸血鬼であることを告白するが……紅子はなんと……。そして、その先に待ち受けていた人生の転機に、読み手は目を離せなくなる。

吸血鬼の概念を逆手に取るアイデアは、数あるバンパイア作品とは違って悲壮感が少ない。前向きに生きようとする「一族」の創意工夫と温かい「家族」の絆に、うっとりとした優しい読後感を得られるはず☆

その他のおすすめレビュー

愛宕平九郎さんの他のおすすめレビュー2,412