作者さまの、素晴らしい筆致で描かれた、見事な作品。
無邪気な燕の篭(ろう)は、受けた恩を返そうと、ひとりの男の体に憑きました。
ところがその男、普通の男ではなかったのです。
その男、十馬には、祓いきれないほどの、凶悪な鬼が、いくつも憑いていたのです。
十馬は、どうしてそんな体になってしまったのか。
そして、十馬に憑いた鬼の凄まじい力を利用しようと、暗躍する者たち。
弟、宋十郎と共に、鬼を祓うために旅立つ、篭(ろう)=十馬には、どんな運命が待ち受けているのでしょうか。
あなたの目で、見届けてください。
自分を救ってくれた和尚に報いるため、自らの魂を差し出した燕の篭(ろう)。
彼の差し出した魂は、鬼に憑かれ、魑魅魍魎に侵された十馬の身体に宿ることとなる。
兄十馬の変貌ぶりに不審感を抱いた弟の宗十郎は十馬の中に宿る魂が兄のモノではない事を見抜き、目の前にいる兄は燕の篭であることを知る。
二人は十馬の中に潜む鬼を祓うための過酷な旅に出ることとなる…
悪鬼が潜む物陰の闇。
魑魅魍魎が跋扈する貧しい村々。
武士と農民の危うい関係性。
人の心に巣食う様々な穢を、無垢な燕の魂が見つめる和風怪異譚!!
魅力的な登場人物達が怪異蔓延る古の日本を舞台に希望を求めて藻掻く様は胸を熱くさせます。
怪異の描写がゾクリと背筋に冷たく、人の温もりはどこまでも心を温かくさせてくれる。
種族も身分も立場も超えて、心を繋ぐのは心。
作者様が丁寧に創り上げられた世界観と、それを支える高い表現力が、瞬く間に読み手を、じめじめと魑魅魍魎蔓延る古の日本に惹き込んでくれます!
素晴らしい作品。
オススメです👍
都合により20万文字程度しか読めていませんが、そこまで読んだ感想としては「とても良い作品」でしょう。
少なくともレビューを書いて応援したくなる程度には。
ジャンルは異世界ファンタジーですが、物語の舞台は中世日本のようであり、読むとジャンルとの違和感を感じます。
結果、ありきたりな異世界ファンタジーを好む層とのギャップを生じさせるので、避けられてしまう要因ともなっているのかと。
ピッタリ当て嵌まるジャンルが無いのが原因でしょう。
この辺はカクヨムサイドで考えて欲しいと思います。
人でありながら人ではないものに憑かれ床に伏せる主人公。
瀕死の状態で寺の和尚に拾われた燕。
恩義を感じた燕は床に伏せる主人公を助けたい、そう考えるように。
ある日、梟により選択を迫られます。
燕は考え救いたいと願う主人公に魂を宿すことに。
しかし、その結果は思っていたのとは大きく異なるものでした。
少々突飛な設定ではありますが、丁寧な描写により物語に引き込まれます。
魅力のある登場人物、幾多の苦難を乗り越え京を目指す道中。
出会いあり別れあり、葛藤や嘆きも含め起伏に富んだ内容でしょう。
主人公も同行者も決して無双できるわけではありません。
そんなに世の中甘くはないわけで、その点は上手くバランスを保っていると感じます。
惜しむらくは男性主人公と主人公に同行する男性陣に対して、女性陣の魅力がやや乏しい面もあります。
度々絡む忍びの雨巳と言う存在に、もう少し女性としての魅力を付与すれば、ヒロインとして立ってくるのではと。
文章は一見すると堅苦しく見えますが、実際に読んでみると読み易く、理解が及び易いのも良いです。
難解な語句を使い、さも文学を気取る作品とは雲泥の差があるでしょう。
なかなかの秀作だと思います。