わんわんの一日と言語理解への道
第1話 妾も愛犬家じゃ、ふふっ(鬼女神様・談)
今日もご飯が美味しい。
ウマウマである..じゃなくて、日々生き残る為に仕事や言葉、重要な事を覚えようと奮闘中だ。
それでも味覚が現地民と同じなのはラッキーである。
ご飯が不味いとストレスだ。
そりゃもう、これだけでお家帰るってなる。
帰れないけどなっ!
つまりご飯が美味しいのは素晴らしい。
ウマウマ、おかわりください大盛りで。
ってな具合に、頭がだんだん馬鹿になっている感じ。
でもさ他の事、例えば、どうして自分はここに居るの?
とか考える隙間がなくて、それもいいんじゃね?って思う。
考えない、考えない?..ん。
...
...
...
あれ?なんだっけ。
そうだ、そうそう、注力すべきは、命大事に生き残る事だ。
メンタルが落ちるの、一番駄目だと思うんよ。
生きる気力ってのは、ご飯一つで減るしね。
いや、シリアスに言ってみたけど、実際はそれほどハードモードじゃないよ。
新しい職場に転職したんだけど、外資系で従業員が外国の人ばっかりだったって感じ。
皆、友好的だし気持ち的には、追い詰められてはいない。
ご飯美味しいし。
米っぽい料理もあったぞ、カレーっぽい味付けのも。
もう、食事に関しては文句も出ない。
アジアンテイストっていうより日本独自の和洋折衷で出汁文化ありの、薄味だけど美味しい系と肉系が多いかも。
強いて言うなら魚が少ない。それだけが心配だね。あと、カルシウムとれるかなぁ。牛乳っぽい飲み物あるけど、あれ、動物の乳かなぁ?
話が食べ物一色になってきた。
異界に来ての感想が、ご飯が旨いで終わる自分。
まぁメンタルは大丈夫だと思うよ。
ご飯美味しいし。
とかふざけているけど、現実を文字化すると絶望的なんだけどね。
死んで?異界にいる?奴隷?
疑問しかないのである。
もう、考えないほうがいいよね。(白目)
...
でだ。
ご飯食べて、お仕事して、知識を学んで、寝て起きて〜と繰り返していく内に、例の赤日になった。
あのラドの日である。
留置場にいた時も迎えていたし、始めてでもない。
でも意識したのは、今回が始めてだ。
それは前日、お仕事を一緒にしている黒犬さんが教えてくれた。
アリキ先輩が居ない時のお仕事は、この黒犬さんがフォローしてくれている。
彼女(奥様ね、旦那さんは白犬さんだった)は、どうやら荷担ぎのプロフェッショナルで一番偉い人っぽい。
見た目はフサフサの黒犬さんなんだけどね。
二足歩行で、可愛いベストとふんわりズボンの長毛種の大型犬。
真っ黒の毛並みに、ブルーの瞳。
牙が狼並の凶暴なお顔とキュートな長いマズル。
手はフサフサの毛皮だけど、人型に近いので器用そうだ。
因みに大きさは二メートルちょっとあると思うよ。
大きいワンワンだ。
初見は巨大人狼かと思ったけど、お話する声は優しい女性のものだった。
何言ってるか不明だけどね。
その彼女が、明日はラドの日だよって、仕事終わりに教えてくれた。
黒犬さんのウルズラシャ(きっと違う発音だ)さんが、ロドムキー(ゴンドラキーね)を差し込みながら、腕時計を示す。
ロドムキーと同じく、穴に潜る時の装備で外界の時間を見る道具、つまり腕時計だ。
ただし、自分が思う腕時計ではない。
四角い小さなコンパクト、それに腕に巻きつけるベルトがついてる。
蓋を開くと四列の数字がくるくるしていた。
ダイバーズウォッチみたいに、方向と深度に反応しているっぽい。
っぽいだよ。
四次元とか、ワシの脳みそでは理解不能じゃ。
あの竪穴のフォログラム装置みたいに、ファンタジーに突然ぶっこまれるSF的な道具だと思う。
でも、きっと動力は謎物質で喋ったりするかも知れない。怖い。
そんなハイテク腕時計だが、当然、文字もわからん奴には意味がわからない。
けれど、ハイテク四次元羅針盤とかを見せた訳じゃなく。
彼女は、その蓋の方を見せてくれたのだ。
コンパクトの蓋。
そこには受付にあった時計と同じ、昼と夜、何曜日かの絵が動いていたのだ。
ハイパーテクノロジーぃ〜いやだなぁ、もう、魔法だよって言われたほうがきっと衝撃が少ないと思う。
とか茶化したが、これもロドム同様、何かあった時は必須の回収物であると記憶した。
つまり、穴の中に入って、無事に外にでるには、ゴンドラキーとこの腕時計が無いとマズいって訳だ。
さて、蓋にある絵柄は
蛇の昼だ。
失われた神を埋める赤日がやってくるなら、ロプ(穴)に居てはならない。
お仕事はお昼で終了。
取り残されたら、たぶん、死ぬと思う。
いつものモンスターが凶暴化。
モンスター避けのお香も効果無効っぽい。
で、お外は赤い夜になる。
双子のお月さまの運行状況なのか、重力異常なのか。
赤い夜にお外にいるのも駄目らしい。
オルザスは数の概念、暦や時間をわからせようと長々と色々な絵や書物を広げた。
そして物知らずに、真剣に繰り返した。
七という数。
今日が何番目の日にちであるのか。
そして曜日を表す絵の最後、七番目の日を繰り返し見せる。
そこには赤い空に大きな目玉がグリグリだった。
グリグリ血走ったホラーな目玉の絵が描かれていた。
悪夢みそうなホラー絵である。
七番目の日、ラドクルゥブルズ。
多分、そういう発音だと思う。
ラドの日は、穴に入っちゃ駄目。
ラドの日は、お外で寝ちゃ駄目。
だから、ヘラの日のお昼すぎには、安全な場所に移動する。
屋内か穴の外の地下街。
了解、オッケー、ワシイイコ。
普通に夜になる前に、食堂では沢山の料理をつくり、それぞれに弁当のように手渡された。
お部屋でじっとしながら食べるのかな。
路上生活や一人暮らしなら、その日は食べないって選択になるのかもしれない。
でも、ここは福利厚生が充実しているから、たんとお食べという感じでいっぱい渡された。
堅パンやら美味しそうな乾燥肉に、お茶。
ワシの場合は、お茶で水筒をぱんぱんにした。
入れてくださいって水筒を食堂の人に差し出したら、ほれほれという感じで入れてくれる。更に、何か他の器あったらもってこいよって感じ。ニコニコ、やったぁ。
お茶、麦茶っぽいやつだ。嬉しい。
で、当日。
現地民とは一味違う?自分は、全く動けなくなる事はなかった。
けど、深夜に意識が消えたと思う。
寝たんじゃなくて、麻酔で眠ったみたいにスッと意識がなくなる。
気がつくと全身から力が抜けて、怖いレベルの虚脱。
で、ゲロって目が覚めた。
これも麻酔から覚めた時と同じ感じ。
寝方によっちゃぁゲロで窒息死もあるんじゃね?
前日はお腹いっぱい食べちゃ駄目だわと学習。
そいで寝ゲロで目覚めて、汚物のシーツごと引っ剥がす。
まぁまだ夜明け前、ラドは始まったばかりだと思う。
他の子供たちは、死んだように動かない。
意識したからかもしれないけど、ラドの日ってのは重力が重くなってるのかなぁって思った。
んで、ちびっこもゲロったらマズいので、部屋中を見て回る。
息を確かめてから、寝相をなおす。
布団も窒息とか怖いから、よく見て回る。
そしてヨロヨロしながらも動いている内に、虚脱が抜ける。
洗い場でシーツと自分をきれいにするために移動。
トイレにも行って、自分の体調をはかる。
どうも調子が悪いんじゃなくて、物理的に何かがのしかかっている。
やっぱ、過重力なんじゃね?
慣れたら自分ならイケるんじゃね?
まぁ何もせんけど。
それでも以前より影響を受けている。
重力変動説だとすると逆なんだよね。
慣れて軽減されるならわかるんだけどね。
ここの人と同じご飯を食べたから?
ここの神様の印をもらったから?
頭を巡らすが答えは出ない。
たどり着いた洗い場で桶を探す。
組み上げ式のポンプもどこか元の世界にあったのと似通っている。
あぁ〜何だっけ?あれ、何で私は..
それを見ながら、嫌な事に気がついた。
ごっそりとあるべき考えが抜け落ちている。
まるで、抉り取られたように無いんだ。
留置場にいる前は何処にいた?
まぁいいか。
仕事に行って倒れた後は?
死んだのかなぁ。
何で部屋着で?
うん、わからん。
で、済ませる自分。
穴に落ちてもいないし、地獄の門番にもあっていないと茶化す自分。
正常じゃないだろ、こんなの。
震える自分の手を見る。
何とか桶に水をためた。
手、私の手?
汚れたシーツを水に沈める前に、常夜灯の下へと桶を寄せた。
それから、そっと覗き見る。
今まで、何度か見ていたはずだ。
自分の顔だ。
顔を洗う時、建物の硝子、どこかで自分を見ていたはずだ。
見ていたのに、気が付かなかった?
水面にはギラギラと光る白い光り。
変哲もない己の顔。
だが、見返すのは蛇の目だ。
真っ赤だ。
あれ?
...
...
...
...
...
...
あれ?
なんだっけ。
ワシ、水を覗き込んで首をひねる。
いつも通りの真っ赤なお目々。
桶の角度を変える。
うむ、いつもどおりの良き毛並みである。
そこには元気で呑気な顔がある。
瞳は蛇のようにも見えたが、よくよく見ると哺乳類のもので緋色と黒の虹彩だ。
病気では無さそうだが、どう見ても人型ではない。
類人猿から進化したとも見えない。
犬の人と同じ系統だ。
つまり人狼、人犬?
名字が体を表しているわけでもなかろうに、立て耳が頭部に生えていた。
にょき。
そして人間の耳がある場所には、何も無い。
うわぁ。
毛深さはまだ、人間の範疇。
顔には髭もなくマズルも伸びていない。
ちょっとホッとした。
眉は麻呂眉で、今まで通りだしね。
わふっ..
薄々気がついていたけど、ワシ、やっぱり体が変化しておった。
徐々に、異界の住人と同じになっていたからこそ、彼らも受け入れてくれたのかもしれない。
自分がヘラの系統だから?
何れ、全てが変わるのかな?
でも、それって不幸かな?
あれ、そんなに怖い事じゃない?
...
...
...
ヤァ ゲェタセグゥトゥ アイゾゥ
もうトウゥトをさが..て、ウァンダン必要はナイ。
ドゥアはたどり..の..ゃ。
後はアンゲネェン..過ごすが...。
それこそがコンクヴィナ..慰めよ。
故に忌神にフォイゲン愚者..伏して詫び..ゼヒィエンチョイデヒゲンナ
妾が笑みを浮かべて..
...が消えるその前に。
伏して詫..無論、それにて......しないがな。
タワニヒィストタワニヒィスト
お前はたどり着いたのじゃ。
その徳と同じ苦しみを知る者よ。
コンクゥビィナ..がマィゾォウンとして過ご....い。
そしてもし..が救..うというの..目を閉じて..ごして...や..ぞ。
...
...
...
「ん?お腹減ったかも」
親類縁者、血縁知人、皆、彼岸に渡ってしまったのだし。
もうこうなったら、気楽に生きていくしか無いよねぇ。
おまけに、ワシ、リアルわんわんだしな。
犬種は何だろう?
柴犬?柴犬なのでしょうかっわふっ!
そういや、尻尾はあるんかいな?
***
無事、シーツを洗って干すと部屋に戻った。
洗濯物の干し場は、謎のきらきら水晶と爽やかな風が吹いている。
草原のそよ風って感じ。
深く考えてはいけない、怖いし。
一応、大きな洗濯場は別にあって、ここは子供部屋の水場部分の干場だ。
顔も口もキレイにして戻る頃には、倦怠感は減っていた。
順応してるって感じ。
けれど、それは自分だけだ。
子供らは朝になっても動けない。
部屋の中を動き回っているのは自分だけだ。
目が覚めて鳴き出す子供たちに水を飲ませ、トイレの世話をする。
鳴き出すぐらいならいいが、殆ど昏倒してるようで心配。
順繰りに見て回っては、お水、おトイレ、ご飯食べれる?ってする。
いつものことで慣れているみたいだけど、見て回ると笑顔が浮かぶ。
やっぱり体はしんどいし、ちっちゃい子だもんね、不安だよね。
言葉殆どわからなくても、元気に動き回ってるワシを見ると安心するようだ。
お昼頃になると、建物自体が静かになった。
たぶん、動ける大人もしんどくなって、余程の体力と役目がなければ活動を止めたんじゃないかな。
でもその頃になると、子供たちは再び寝に入って、自分は暇になった。
弁当モリモリ食べたら、もう何もすることがない。
そこで部屋の近所を見て回る事にした。
防犯の為に見回る兵士はいるだろうが、好奇心もあるので怒られない程度にふらつくのだ。
ふへへ、探検、探検。
ここ最近、やっと穴蔵の中、配置がわかってきたんだ。
ワシの脳内マップもだいぶ補完されつつある。
子供らの居住部屋の反対側は、人足、まぁ大人の居住エリアだ。
あと、高級取りのアリキのような人たちは、別の階層エリアに居住区があるようだ。
この大人達のエリアに、子供たちは入っちゃ駄目。
立ち入り禁止っていうより、入らないほうがいいよって意味。
大人のそれも独身者ばかりのエリアは、トラブルも多いから危ないよって事。
そんな大人と子供達は共有部分、食堂とかでは一緒になる。
だから自分も、共有部分だけを見て回る事にする。
大人の居住エリアとか、覗いてみたいけど、何かトラブルにあっても怖いしね。
んで、最初にお馴染みの食堂に向かった。
そしたら、やはり自室にたどり着けなかった大人、途中で力尽きた男達が食堂で転がっていた。
因みに女性は早々にお部屋に入っちゃう。そりゃ、そうだ。
自分のように動ける者は現地民にも確かにいる。
子供部屋はそんな動ける者の監視もついていたりするんだよ。
自分が動いて、子供たちの面倒見ているのもきっと知ってる。
そしてこの食堂の共用部分を抜けて行かないと子供部屋に入れないので、悪事?とか子供にはできない。もちろん、そんなゲスは地下では処刑だろうしね。
まぁそんな訳で子供部屋は安全な位置にあるんだ。
その他のお家、お部屋では必ず戸締まりする。
無頓着に通路でひっくり返っているのは、やっぱりデカくてゴツい野郎どもって訳。
大凡はギリギリまでロプにいたり、その他のお仕事をしていた男達である。
多少意識はあるようで、一番酷い昼時でも床で芋虫になってウゾウゾしていた。
しょうがないので、自分の倍以上ある男達を担いでは壁際に並べていく。
一人二人、ゲロまみれだが、自分だけ粗相したんじゃないとわかってホッとする。
そりゃ吐くよねぇ〜ってちょっと拭ってから、並べる。
息を確認。
お水飲む?
で、食堂のピッチャーらしき器とカップを拝借して、推定水?を飲ませていく。
「おぅありがとよぅギナっ子。おめぇは大丈夫そうだなぁ、ギナは頑丈だからなぁ。そんでもお前も寝てたほうがいいぞぅ、疲れちまう」
「ダイジョブ、ダイジョブ」
ありがとう?って言われたような感じ?
一応、OKって具合の現地語で返す。
もっと言葉を勉強しなきゃなぁ。
それにしてもさ、いくら違う世界の仕組みだからって、こんなの変だよね。
7日に一度、殆どの人が行動不能とか。
生き物としても変だし、怖いよ。
重力変動だとしても生物として順応しているのが普通じゃないのか?
つまり環境の話じゃないって事だろうか?
まぁ考えても、自分にはわからない。
そうして一頻り世話をすると男達は必ず頭を撫でてくる。
たぶん、お礼のつもりらしい。
結構な数を壁に並べ終える。
探検は止めとくかな、この調子だと他の通路も転がってそうだ。
暖炉側の椅子に座ると、男達を眺めながら自分も推定水を飲む。
あ、これスポーツドリンクもどきだった。
これならゲロの後でも大丈夫だね。
さすがにちょっと疲れて、椅子で伸びをする。
アリキ先輩や他の人たちが、自分の頭を撫でるのにも一応理由がありそうだ。
黒犬さんのウゥ(略さないと発音できない)は、二メートルの大犬さんだ。
けれど、巨漢の鬼の人たちは声をかけると良く頭を撫でている。
そこはお犬様と同じで友好的な人とか知り合いだと挨拶代わりみたいだ。
そしてウゥより小さな人、主に地上の人にも頭を差し出して撫でてもらっている。
こちらはお礼の挨拶みたいだ。
どっちのお礼かは不明。
撫でさせてやっているのか、撫でてもらっているのか。
ただ、黒犬さん達にとっては、握手みたいな感じなのだ。
だから、ワシの頭をポンポンするのは、大凡、相手に敵意がないってそのままの意味。
あたりまえ?
ほら、馬鹿にしててもポンポンするでしょ。
で、何となく黒犬さんと一緒にいたらわかった。
ウゥの系統、犬さん?狼さん?は、他の種族に好かれている。
そりゃもう、殆どの出会う人出会う人、にっこり笑顔だ。
ウゥだから?なのかもしれんが、大凡、知らぬ相手っぽい人も最初から笑顔だ。
それから種族的に希少なのか、ウゥと同じ大犬さんは少ない。
旦那さんの白犬さんと、数名しかまだ出会っていない。
ちっちゃい犬の子供はいるけどね。
なんとなくだよ。
個人的に顔が広くて人気っていうより、大犬さんを見かけると皆何だか嬉しそうなんだよね。
それから担ぎのお仕事も、大犬さんは人気みたい。
お願いしますと頭を下げられる事数回。
どうやら大犬さんは、何か運ぶ事に関してはプロフェッショナル扱いのようだ。
ウゥと組まされる、というか彼女がワシの面倒を見てくれる感じなんだけど、そうするとワシも同じ大犬仲間と思われるようだ。
確かに、徐々に犬になってる。
うん、朝に確認したけど犬になってる。
いつから?
多分、牢屋にいた頃は人の耳だったと思う。
アリキ先輩と最初にロプに潜った時も、人だったと思うんだ。
それ以降、ロプから出た時から曖昧。
変な話だけど、薄々は、わかってた。
違和感ていうかね、体の組み立てが少し変わったような感じ。
視界にしろ皮膚の感覚にしろ、毎日少しずつ曇りがとれていくような感じ。
体がしっかりしていくようなね。
つまり不調じゃなくて健康になっていくような?
不都合がないから、後は気持ちの問題。
急にミュータントしたんじゃない、自分が認めるか認めないかだけだった。
で、今朝、もう無視できないレベルに達した。
耳が動くんだよねぇ。
これ以上毛深くなるのは吝かではないが、髪色も変化している。
明るい茶色と白だ。
白髪になるのはまだまだ先なんじゃが。
問題は尻尾だ。
あるんだよね、意識したらゴリッとある。
まだ小さいけどね、これニョキッと大きくなる予感。
ズボンは両脇で調整するスリット付きの紐縛りだ。
尻尾は出せる。
下着も褌だ、いける。
問題は、全身毛深くなるのかどうかだ。
それから背中にあるらしいヘラカーテの彫り物だ。
おぅ何だか一気に現地民ぽい。
まぁ何だ、痛くないし苦しくないからいいや。
そんなんでいいんかい?
だって、しょうがないもん。
腕があって邪魔だから切る?
切らんでしょ。
犬耳でも聞こえるんだから良し。
尻尾?まぁ生えちゃったんだからしょうがない、だよ。
実際、わんわんイヤ~で困るのは、微妙に聴力がアップして遠くの物音まで聞こえちゃうってだけだ。
今に耳もコントロールできるようになったら、伏せて聞こえないようにできるかもしれない。
今のところ毛深さは普通。
両手にうっすら産毛が生えてる。
もしかしたら今にウゥのような、大犬さんになれるかな。
何かワクワクしてきたぞ。
で、結局、食堂で一日過ごしたら、他にも動ける奴らが集まりだした。
最後は言葉も良くわかっていないのに、雑談の輪に入って終わった。
人の輪に加われて、嬉しかった。
生命の木、或いは許しの物語 C&Y(しーあんどわい) @c-and-y
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