そこで生きている人々の鼓動が聞こえる、重厚なるハイファンタジー。

あらすじを拝見した時、一度読み始めたらきっと止まらなくなるだろうと予感しましたが、正しくその通りでした。
警告なのか道標なのかわからない昏い夢と、過酷な状況の中で家族を護り、道を切り開こうとする主人公の現実。選択した道と選択しなかった道が交差する緻密な世界観の中、主人公は葛藤を重ねながら、次々に目の前に現れる、それぞれに辛い重荷を背負った子供たちと共に成長していきます。
メインの登場人物たちだけではなく、脇を固める人々の心理や行動の描写も精緻で丁寧なので、複雑なストーリー展開の中でも「今どこで誰が何をしているのか」を見失うことはありません。子供たちをその境遇に追い込んだ大人たちを後ろから蹴飛ばしたくなる衝動に駆られつつ、それでも懸命に生きる彼らに、どうか幸せにたどり着いて、と応援せずにはいられなくなります。ハイファンタジー文学の重厚さを好まれる方は、ぜひ。

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