恋の毒

悠井すみれ

第1話

 父帝の妃に恋をした。

 父の死後、彼女は兄の妃になった。

 兄の死後、彼女は彼の妃になった。




「老いた父も愚鈍な兄も貴女に相応しくなかった。これがあるべき形なのだ」

 初夜の床で打ち明けると、彼女は涙を流して微笑んだ。

「貴方だったのですね。やっと分かった……!」

 彼の想いは報われた。焦がれた笑みをかいなに抱いて、彼は心から満足した。




 即位して間もない新帝は、父と兄と同じ病で斃れた。

 三夫にまみえた皇后は、最初の夫の墓前で喉を突いていた。

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恋の毒 悠井すみれ @Veilchen

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