徐々に高まる緊張感

現代社会の闇の部分。
そのひとつを切り取りテンポよく書かれています。

飛躍した犯人の行動や思考は創作にありがちですが、本作の場合は『今の社会、これくらいならあるかもしれない』と思わせるところに恐怖を感じました。ただし気分が悪くなるような描写は(個人的には)ありませんでしたので、その辺りは感謝したいところ。

この物語で作者が言いたかったことは何だろう? と考えました。
単に謎や恐怖を読者に体験させるだけならこんな文字数はいらない。言葉を重ねて綴ったのは、未成年保護法の在り方や、ネット社会の不明瞭さ、未成年者の危険意識の低下を危惧してのことかな……なんて思いました。

年々増加傾向にある未成年犯罪に、最近ではようやく司法も動き出しましたが、それでもまだ不十分だと言わざるを得ません。親も教師も子供に善悪を教えられないのなら、一体彼らは誰にそれを教われば良いのか。犯罪に巻き込まれるほうも注意力が足りているとは言い難いですが、犯罪を起こすほうも安易な気持ちでやりすぎる。大人の物差しで測ったり枠にはめるのはいただけないけれど、最近はあまりにも子供に遠慮している大人が多いと感じます。いけないことはいけないと、はっきり言ってやるのも愛なのかもしれません。

さて、物語内の猫率ですが……ここは伏せておきます。
読んでのお楽しみとしてください。

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伝書猫

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