拙作「通う千鳥の鳴く声に」応募時のあらすじ

*私がこの作品で応募したコンテストは、本文の文字数7万字から受け付けておりました。その関係もあって1000字前後でのあらすじとして作成しています。


 1850年前後、地方の小藩である黒河藩で、下級藩士である秋生あきう修之輔しゅうのすけは剣道場の師範代を務めていた。修之輔は沙鳴きという剣を抜かず鞘のまま相手と戦う技の持ち主であり、またその美貌で知られていた。

 ある時、他藩から黒河藩にやってきた本多ほんだ朝永ともなが弘紀こうきが、修之輔の剣道場に通い始めるようになる。明るく元気でありながら幼い頃に母を亡くした弘紀と、父親に裏切られた過去を持つ修之輔は次第に心を通わせるようになる。修之輔の幼い時からの友人、柴田しばた大膳だいぜんは、いくつか不自然な点がある弘紀の身の上に疑問を持つが、解明には至らない。大膳の心配をよそに、道場の総稽古や日々の交流を介して修之輔と弘紀は親密さを増していく。

 二人の穏やかな日々は、隣藩である羽代藩との交流試合によって大きく変化していく。

 黒河藩の隣の羽代藩は、現・黒河藩主の妹であるたまき姫が嫁いだ先だが、環姫は羽代藩内部の家督相続の争いに巻き込まれ命を落としていた。環姫を偏愛していた黒河藩主は以降、羽代藩との交流を断っていたが、未だ家督相続の争いに決着がつかない羽代藩は藩の重役である田崎たざきを黒河藩に送り、環姫の子どもが家督を継げるよう黒河藩の助力を依頼する。

 田崎のその行動は、家督相続の争いを咎め、羽代藩主の改易を奨めようとする幕府の意志に背くものであるため、黒河藩と羽代藩の密議は、両藩の交流試合である御前試合を隠れ蓑に遂行されることになる。

 修之輔と弘紀、大膳を含む道場の五人は、その権謀渦巻く交流試合、実質は黒川藩主の前での御前試合に出場することになる。御前試合前夜、修之輔に恨みを持つ道場の門下生、広川ひろかわ利蔵としぞうは、田崎の思惑を阻止しようとする羽代藩の刺客に修之輔を襲撃させる。修之輔は沙鳴き本来の姿である一撃必殺の技でこれを返り討ちにするが、相手の打った銃によって左腕を負傷する。

 御前試合で黒河藩の主将を務めた修之輔は、同じく羽代藩の主将を務めた寅丸と親交を得る。そしてその寅丸から聞いた羽代藩の内情から、弘紀が環姫の子どもであり、羽代藩の家督相続争いの中心にあることを知る。弘紀は修之輔が羽代藩の刺客によって負傷したことを知って黒河藩から姿を消す。

 弘紀と離れ離れになった修之輔は、弘紀の下に行くために黒河藩を離れる決意をする。弘紀は羽代藩の家督相続争いに自力で決着をつけ、改めて修之輔を羽代藩に迎え入れる支度を整え、二人は再会する。(990字)

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公募の時に要求されるあらすじの書き方 葛西 秋 @gonnozui0123

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