ホラーとコメディは紙一重。それを教えてくれる一作。

 ホラーが好きな方だったら、きっとこんな経験もおありでしょう。
 
 怪談番組などを見ていて、『その先のオチ』が予想できてしまう。「これ絶対、足元とかに幽霊いる奴だよね」と先が読め、「ほらやっぱり! テンプレ乙!」みたいなノリになったことがあるかと思います。

 そんな風に、ホラーにはテンプレというものが存在します。
 ある意味それはベタともなり、本気で怖がらせようとする製作者の意図とは異なり、『笑い』を招くこともあります。
 でもその一方で、「当事者だったら絶対に笑っていられない」という現実もあります。


 この作品ではそうした『ホラーのテンプレ』というのを逆手に取り、見事なワンシチュエーションの会話劇を完成させています。
 
 フィクションとして捉えればコメディとなりうるテンプレ。でも、ノンフィクションとして当事者になったら圧倒的にホラーとして怖くもなるテンプレ。そんな『紙一重』を見せてくれるところが秀逸でした。

 テンプレだからこそ「あるある!」と共感でき、ニヤリともすればゾッともできる。そんな『ニヤリ』と『ゾッ』の連続を作り出し、読者を最後まで楽しませてくれる、完成度の高い短編です。