諸行無常とは、仏教の根本思想の一つであり、この世に存在するものは常に変転して生滅し、永久不変なものは無い、ということ。それを、垣間見せられるショートです。とはいえ、まったく構える必要はなく、豪華絢爛な遊女の世界に、すっと入っていける、丁寧で読みやすい語り口です。その遊女の粋と、「生滅」の、うら寂しい、ひょうと野原を吹き抜ける、臭いのある風を、感じる物語です。この文字数で、すごい世界ですよ?さあ……、覚悟してお読みなされ。
文字数を確認して、これだけの文字数でこれだけの感銘を与えるのかと驚嘆し、他方、ある程度、史実に基づいているのかと知り――つまり全て作者が創作したのでないのだと知り――それで少し安心したりと、我ながら何をしておるのだと、そんな気持ちにさせる1品である。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(67文字)
とても素敵な書き出しに、ぐっと引き込まれて先に進むと、きれいな言葉が続いている。絶妙なテンポで。わら氏の作品は、読んでいると途中から白い光に包まれた世界を歩いているような気分になります。そしてそれは快感なのです。癖になりますから。
万物はすべて変化し、普遍のものはない。一休和尚と遊女の地獄姐さんの句のやりとりを傍らに過ごす女童の静かなモノローグで物語は進んでいきます。むろん一休さんの「わがまま和尚」ぶりは歴史にある通りで笑えます。奔放で利己主義……の姿を『生涯演じ続けた』名高い聖職者です。そんな彼に心を砕いて微笑みながら寄り添い、座敷へと向かう姐さま。うん、大人だ♡雪のように艷やかだった姐さまを草むらに見つめる女童は何を思う。ラストシーンの情景はとても”美しくて”、深くて、感動的なお話です。
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