機械でも、れっきとした人間だから

好きなタグで検索をかけて偶然発見。
綺麗にまとまっており、温かみを感じる作品でした。
本作はSFですが、とりわけドラマ部分に注力されているような印象を受けました。そして、アンドロイドを非人間的に扱う多くの作品と、対極の立場にあるのも本作の醍醐味といえます。人間とアンドロイドの対立を描いた作品は多いですが、アンドロイドの葛藤に光を当てたのは割と斬新な視点なのではと思います。丁寧な心理描写と、意味ありげな台詞回し。それらが表現する機械的で、どこか人間くさいアンドロイドの心の内側は読んでいて楽しい部分でした。突飛な展開や予想を裏切ることはないものの、堅実で安心感のある話運びがそのリアルさを際立たせています。

作中ではアンドロイドを中心とした物語が展開され、緻密に練られた世界観の上で従来の作品に見られるアンドロイドにまつわる社会情勢やシステムなども踏襲されているので、既存のアンドロイド系SF作品が好みの方にも刺さることは間違いなしです。とはいっても全体としてSF特有の敷居の高さも感じさせず、この手の作品に親しみのない方でも気軽に踏み込める内容となっています。

埋もれているのが不思議なくらいに面白い作品なので、少しでも興味を持った方は一話だけでも目を通してみてください。