海外帰り

海外帰り

　俺は今日、無職となった。長い海外出張から帰国し、これからという時に会社が倒産するとは夢にも思わなかった。

　仕事帰りにいつも利用していたマッサージ屋によるのも恐らく今日が最後だろう。フィリピン語で談笑する店員達を尻目に、俺は最後のマッサージを堪能していた。

　その翌日、マッサージ屋の前には人だかりが出来ていた。警察も来ているようだ。多分もう営業することは叶わないだろう。何せ6000万円も盗られたんだから。

　まぁ、マッサージの質も程度が知れていたし、わからないのをいいことに母国語で会社の愚痴やら金庫やら、客をほったらかしてべらべらとくっちゃべるようなやつがいる店だったのが幸いだ。そんなことを考えながら俺は中身の詰まったスーツケースを手に空港へ向かう。

　目指すはもう一度、フィリピンへ。