第4話 私の推しつ推されつの日々

 私の人生を一週間、彼のために使って欲しいと言われた内容がこれ。


『一週間の間、私の小説を読んで💓を付けて欲しい』


『カクヨム』という小説投稿サイトの名前と彼のペンネームを教えられていたので『かぐや』という名前で登録して彼の小説に💓を付けた。その結果、自分でも驚いたんだけど面白く感じたんだ。

 あ、彼には悪いんだけど彼の作品というよりなんだけどね。だから一週間が過ぎた後も、まぁ読んでやるかと思えたわけで。


 それが影響したのかどうかわかんないけど、私も歌いたくなったんだ。それでYouTubeに登録して思い切って歌の動画を作って流してみた。結果、丸一日たっても0回視聴のままだったから、つい彼の小説に感想を書いたんだ。いや、感想じゃなかったんだけれども。


『かぐやでYouTubeチャンネル作った』って。


 しばらくして彼が見てくれた。正直、うれしかった。

 誰かに歌を聴いてもらえることが。

 自分の存在を知ってもらえることが。

 本名じゃないけれど、かぐやも私なんだから。

 ちなみにかぐやの由来に大きな意味はない。彼と出会った夜が満月だったというだけのこと。

 ついでに彼のペンネームの翁は、私に合わせて改名したらしい。元の名前、忘れちゃったけど。


 私の動画にトークはなく前置きもなしで歌オンリー。だけど最新の動画は特別に一言だけ。


『――ありがとう。あの日、貴方に出会わなければ私は月に向かって飛び降りてた』


 私の感謝の言葉付き動画のコメント欄にはこう書かれていた。


『約束の一週間はとっくに過ぎたけど。ちゃんと私の小説を推してほしいな。君を月に還さないよう、毎日がんがって更新するから』




                       ――了――

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かぐやを月には還さない 維 黎 @yuirei

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