第88話 ハッピーエンド
学園祭から一年の月日が流れた……
仲間たちは、それぞれの道を歩き始めていた。
回復してから高校を中退して、作家になる事を目標に、向ケ丘町を出て大都会へと羽ばたいて行った。
プログラマーになる為に、専門学校へ通っている。
『Cafe るしえる』の常連さんだ。
二人の未来の為、14000kmの距離を超え、必ず大きくなって帰ってくると約束してくれた。
とある日、マスターの濱田さんにある物を手渡された。
「実は、ずっと前に
ボクは、動悸が激しくなっていた。
震える手で、綺麗に包装された包みを開封した。
包みの中には、アイボリーを基調とし、白い天使のデザインが施されたマグカップが入っていた。
そして1枚のメッセージカードが……
forever friend
と、ひと言だけ書かれていた。
ボクは、マスターの胸を借り複雑な気持ちで涙を流した。
それからまた月日は流れた……
身長が8cm近く伸びた。
髪の毛も肩くらいまで伸ばし、ブラウンにカラーリングしてみた。
もう、トイレの花子さんとは呼ばせない。
アルバイトではなく、関 菜々花として……。
とある日、空がオレンジ色に染まった頃……
「る、瑠羽太君、ご馳走様。珈琲お、美味しかったよ。また来るね」
ウチの常連さんである
「あ、菜々花……悪いけどヤボ用が出来た。ちょっと今から出掛けてくるわ!」
「え?あ、うん分かった。気を付けてね!」
るぅちゃんが、この時間から出掛ける事は、滅多になく少々不安に襲われた。
大事な話があるんだけどな……
私は、お腹を優しく撫でて微笑みかけた。
店内の掃除を終えた頃、もう外は真っ暗になっていた。
るぅちゃん……遅いな。
私は、カウンターに座りオレンジジュースを口にした。
ピロン♪
SNSの着信音が鳴り、スマホを開いた。
るぅちゃんかな……?!
『よっ菜々花!瑠羽太君に報告できた?』
今は、向ケ丘でOLさんをしている。つぎちゃんの次に常連さんで、仕事帰りによく寄ってくれる。
まだ報告出来てない事を返信をすると、大きくため息をついた。
本当に遅いなぁ……
まさか事故とか……ないよね?
いや、不倫とか?
私は、身体の事もあり少々情緒不安定気味になっていた。
それからどれくらい経っただろう……
ちりんっ……と、ドアの鈴の音が鳴った。
「るぅちゃん、おかえ……」
私は、自分の目を疑った。
まるで、漆黒のカラスを思わせる不気味なマスク……
黒のシルクハットを被り、黒装束……
革の手袋に握られているナイフは、鈍い光を放っている……
「な……なんで?……どうしてDr.ペストが……?」
私は、カウンターの椅子から崩れ落ちた。
全身が震え上がり、力が入らない。
床に尻もちを着き、必死に後退りをした。
お腹を両手で隠し、奴を見上げた。
「誰?一体……誰なの?」
Dr.ペストは、首を左右に傾け骨をポキポキと鳴らし、ゆっくりと私達に迫ってきた。
「嫌だ……やめて、来ないで……」
私は、もう……どうにかなりそうだった。
Dr.ペストは、しゃがみ込み 私の鼻先までに顔を近づけた。
「九条菜々花。まさか、自分だけハッピーエンドだと……思ったかい?」
「いやぁぁああああああああ」
~end~
Dr.ペスト~ボク達の青春は殺人鬼に奪われた~ をりあゆうすけ @wollia
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