七輪で焼いたお餅の香ばしい匂いを思い出し、とても食べたくなりました。
美味しい食べ物の匂いには、人間や動物だけでなく、隠れているモノだって
つられてしまうかもしれないですね。
家の中に誰かがいるって、思うことが時々あります。
二階の書斎で仕事をしていると、誰もいない筈の階下から物音がする。
下に降りると誰もいない。
みつからないように何かが隠れているのかも知れません。
それが、自分の大切なひとであったのなら、もう一度会ってみたいです。
この作品を読んで、身近な音に敏感になった気がします。
最終話、途中で切なくなり、読み続けて、最後に心が温まりました。
もしかしたら閻魔様の許可を出て、いずれあのひとに会えるかもしれない。
でも、その前に、しっかり生きてゆこう、と思えた作品でした。
最後まで読みましたが、いつまでも余韻が残っています。
淡々とした文体の中に、切なさと夫婦の愛と、生き様が詰まっている。
若くして亡くなり、幽霊としてこの世に出てきた妻は、夫がいつか自分を必要としなくなること、いつか自分を忘れてしまうこと、他の人のものになること、すべて分かっていた感じ。
人は生命活動が止まった時に一度死んで、人から忘れられた時に二度死ぬという話を聞いたことがあります。
私は死ぬとき、二度死にたくないな、忘れてほしくないなとどうしても思ってしまいます。
妻・沙代は、夫がこれから幸せに生きるためなら二度死んでもいいと思っていて、それほど夫のことが……と思ったら胸が熱くなりました。
素敵なお話をありがとうございます。
※閻魔様に似ている棟梁の辰さん、気になります