障害者スポーツが題材のお話。東京、北京でもオリンピックパラリンピックが開催されたところなので、タイムリーな話題でもあります。
障害者スポーツをやっている人って、確かにすごい。頑張っているのが分かる。でもその一方で、障害者をやたらと持ち上げたテレビ番組に反感を抱いてしまった経験のある人も少なくないはずです。
本作品に描かれていることって、実のところ子どもの習い事なんかでよくあるケースですよね。
「頑張れ」確かに頑張ることは大事だし必要なことだろう。でも、何をどう頑張るのかは本人が決めることであって、他人が定義することじゃない。
本作品の主人公は、タイトル通り、車椅子バスケは頑張らずに辞めてしまいます。
でも、別のところで勇気を出して頑張った。そのことは褒めてあげたい。
主人公の思いをしっかり受け止めてくれた安藤さんの懐の広さもステキです。
安藤さんはヒーローだ。
だけど主人公もまた、自分自身のヒーローに、そして誰かのヒーローに、いつかなれるよ。
どれだけ他人が「頑張れ」と言っても、
「あの人も頑張ってるんだから、お前も頑張れ」と言っても、
頑張るのは本人だ。
期待に答えられなくて悔しいのも、腹立たしく思うのも、やりたくない、辞めたいと思うのも、その人だけの現実になる。
それはきっと、障害者だけじゃない。
という健常者のセリフは、慰めにはならないだろう。
障害者という場所に身を置かなければ、わからない現実だ。
だけれども。
安藤さんの苦しみは、安藤さんにしかわからない。
浩司くんの苦しみは、浩司くんにしかわからない。
障害者だからと、同じわけでもない。誰かと同じ、と思うほど、残酷なことは無い。
それでも、自分の中に他者の類似点を見いだし、声をかけることが出来たならば。
その言葉は誰かの助けになると、信じて紡ぎたい。
君はありのまま生きてくれ、と。