水没した世界にポツンと建つ塔を舞台にした、登場人物たちの駆け引きと信念と行動の物語。
舞台となる孤立した塔には、コミューンと称する共同体が住んでいる。彼らは厳格な組織運営のルールに基づいて、貧しくも平和な日常を過ごしているのですが、読者から見ると彼らの何気ない生活は非常に謎が多い。
孤立した塔の中で、様々な物資は何処からきているのか。水に浮くことが常識とされ、主として舟に利用される本。そして住民の出自……。
読み進む度に謎の答えは語られるも、その答えにも謎が含まれており、なかなか全てが明かされない。気になって気になって、それが次を読む推進剤になる。
もちろん、登場人物たちの人間模様も非常に面白いです。
読み始めたら、きっと続きが気になるお話です。
生まれてから死ぬまで、海に囲まれた塔の中で暮らすコミューンの人々の物語。
この世界独自の規律と制度での生活が描かれる。
コミューンを支えているのは学者肌である変わり者の司書たちと使徒、そして不思議な力を持った「本」。塔の中心、まるで迷宮のような「図書館」には数多の本が眠っている。
主人公のワタルとゲンヤを中心とした若者の群像劇でもあり、上の世代に都度悪口叩かれながらも仲間とともに切磋琢磨していく姿が印象的。海外の某有名魔法ファンタジーを彷彿とさせるようなところがある。
この世界にはなぜ女性がいないのか(いるのか?)、赤ん坊はどこから産まれてくるのか、百歳をゆうに超えて生きる人間がいるのはなぜか、どうして本が水に浮くのか、この世界の「猫」と「鼠」は一体何なのか、など、尽きることのない疑問とともにストーリーは進んでいく。
字の通り、「本を読んでいるような小説」。
就寝前の枕元で読んでいたい。