第3話 伝えられるもの
「それで『幸運の実』というのは?」
「人間と敵対するばかりじゃいけないって言って『ノミニケーショ』?をしようってお酒を持ってきたのよ。その時に一緒に食べると良いといって彼が生み出したのが『幸運の草』。すっかり木だけれどね」
ドリアードの指さす方向には鈴なりの実がなった巨木があった。
「人間に加工してもらって、見てこれ!」
パキリ、と割ってドリアードは実を食べた。幸運の実はピスタチオだった。
「魔物化した動物は森にとっても危険だから、こちらで狩った魔物は人間に渡してお祭りに食べる幸運の実の塩の購入代金にしているの。今の所はうまくやっていけてるわ」
私は塩味のきいたピスタチオの殻を割りながら、ドリアードとスズキの話を聞いた。
彼はどうやらドリアードと恋仲だったそうだ。異種族ゆえに子孫が出来ることは無かったが、彼と出会ってからドリアードの子株に自我が芽生えるようになった。
だからこの輪に加わって酒を飲んでいる女性たちは彼女とスズキとの子供と言っても差し支えない。そう言うドリアードはどこか遠くを見て懐かしそうだった。
結局、スズキもこの世界で生きることを選んだのだろう。その結果が、こうしてここで生きている。
今も人の心で生きているのだ。
私はこれからも、先達たちの足跡を追う旅を続ける。ウルと一緒に。
森と人の物語 夏伐 @brs83875an
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