第2話 ドリアード
「ウル、それで、幸運の草については他に何か聞いている?」
「あ、そうだったね!」
それからウルはまた私に村に伝わる昔話を教えてくれた。
ドリアードと人間との友好の証というのがその『幸運の草』らしい。それはすでに巨木になり、ドリアードが宿っている精霊樹の側によりそうように生えている。
そこで豊穣祭では、幸運の実を食べながらドリアードたちと酒を飲みかわす。
森からは恵みを。
人からは技術を。
人間にとっての祭りは一日限定だが、ドリアードたちは数日前から酒を飲みはじめ幸運の実を食べて数日間に及ぶ祭りを楽しんでいる。
だからこの時期には、森から楽し気な声が聞こえてくるのだ。
「――って話」
「『落ち人』についてはあまり語られていないのね」
「そうだね。でもドリアードは長寿な種族だから話は聞けるかもしれないよ」
「そうね! 前向きに考えないと!」
私が無理に笑顔を作ると、ウルに気を使わせてしまったのだろうか、彼もにっこりと微笑んだ。
森の奥深くに行くにつれて、楽器の音や女性の楽し気な声が聞こえてきた。
私たちが、ぽっかりと空いた広場のようなところに行くと、緑色の肌、葉で出来た髪や服の女性たちがこちらに注目した。
「なに? 冒険者?」
「こんな時期に来たってコトはドリアードさまに用があるんじゃない?」
「あ~、前にも種が欲しい、花粉がほしいって来た人間がいたね~」
酔っぱらった女性たち――ドリアードの子株たちは私たちを輪に引き入れて酒をふるまってくれた。
ウルはくんくんと酒の匂いを嗅いだだけで何だかよっぱらってしまったようだ。
少しぽーっとしている。
精霊樹からゆったりと巨大な女性――ドリアードが現れた。コップのように酒樽を持ってくぴりくぴりと酒を飲んでいる。
「なぁに~?」
「冒険者みたいですよ~」
「あら?」
子株と女王が話をしたが、女王ドリアードは私を見て、不思議そうに首を傾げた。
「はじめまして、私はサトウ ハルカと申します」
「あらあら、サトーが苗字でハルカが名前なの?」
「はい」
私が自己紹介すると、ドリアードはぱっと嬉しそうに微笑んだ。緑色の肌なのに酒と興奮で頬が上気しているのが分かる。
ウルは幸運の実を食べながらお酒を飲んで、すぐに眠ってしまった。
私はウルを寝かせながら、ドリアードと話をした。
ここにやってきた落ち人はスズキさん。
彼は植物を生み出す能力を持っていた。もう数百年も前の人物なので、亡くなっているそうだ。
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