【下】地主神の領域

 その後、木田宮きたみやは村長に言った通り供物生産工場の写真を撮り、車を走らせた。この圏外を抜けたらまずは警察に通報し、それがダメならばジャーナリストとしての力を存分に発揮するだけ。そう思っていた。しかしこれらの出来事が暴かれて村に警察や野次馬が押し寄せることはなかった。


 通報することも記事にすることもできなかったからだ。


 木田宮がその村の境界線を越える直前に、車は落石に寄って谷底へ突き落された。車は大破し、木田宮は即死。車から放り出され、川の激流に飲まれ、誰にも発見されないまま海にまで流された。腐敗が進んだ死体は損壊し、潮流によって散り散りになりながら沖の方まで流されていった。

 木田宮がその村へ行った事実さえも、誰も知ることはなかったのだ。


 これが偶然によるものなのか、故意によるものなのかは不明である。しかし、木田宮が事故に遭ったその場所は、あの村の地主神の領域であったことだけは間違いがなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神に護られた村と供物生産工場 詩一 @serch

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ