ゆるやかな破滅の靴音が聞こえる……夏

情景が、特に美しく描かれています。
大きな和室、晩夏の日差し、ひぐらしのこえ────

背景描写だけなら、「ぼくのなつやすみ」と言っても通用しそうな
そんな空気感

そこで交わされる、謎めいた会話
徐々に輪郭を帯びていく、おぼろげな事情

近未来的なギミックのあれこれが全く出てこない
これは紛れもなく、真のSFと言っていい作品

極度に先鋭化した思想は
時に私達に微笑という剥がれない仮面を植え付ける
それが、押し付けられたにせよ、絡め取られたにせよ……

いつしか、世界は変質してしまったと後悔する前に
この作品から感じ取るべきだろう

我々が、数々の深く考えずに選び取ってきたものたちの
成れの果てと、答えなのだと……
私達は知るべきだろう。

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