この作品に滲み出る覚悟の意味を知る人が、今の日本にどれだけいるだろう。
自らのことを横に投げやり、ひたすらに娘の未来を見据え、孤独に闘う母の覚悟は、如何なるものだっただろう。
幸せが無いわけではない。
むしろこれで幸せなのだ。
そう言い聞かせながらも、苦悩するのが人間である。
きっとこの物語に登場する母親も、語り尽くせぬほど様々な苦悩を通っただろう。
安い同情は毒になる。
ゆえにあえて語らない。
他者からの優しささえも、覚悟を溶かす毒になる。
ゆえに娘だけでいい。
縛らず、手放さず、ただ柔く手を握り、娘の方から手を離す日が来るその時まで……
許されるならば、その手に籠められた絶妙な力加減と、優しさ強さ、そして覚悟に、物語の向こう淵遠くから賛辞とエールを贈りたい。
非常に素晴らしい作品でした。