魔術学園と守護者

@kuwagatasann

1章

魔術学園

聖ロクシード魔術学園は創設され500年を超える。

現在でも、魔術の名門校とされ多くの優秀な生徒が学んでいる。


エアノアも四回生でもう少しで18歳になる。



「火の使い魔よ。我にその力を見せたまえ」


エアノアは繊細な磁器のような右腕を伸ばし、そっと目を閉じて右手に意識を集中させる。

すると、目を閉じた暗闇に炎が浮かび上がりほんのりと指先が温かくなる。



目を開くと柔らか手先の向こうに赤赤と燃える火球が見える。

それと同時に周囲から感嘆が漏れ聴こえる。どうやら同級生が騒いでいるらしい。


「よろしい!素晴らしいですよ。」指導員の声が聞こえる。




エアノアにとってはこの程度は難しいことでは無いが、指導員でも舌巻くほど見事なものであった。


近年は魔術の力は衰え錬金術に存在意義を脅かされつつある。太古より培われた技術の大半は過去の世界大戦によりそのほとんどを失ってしまった。この魔術学園でも同様でかつての栄光は書物にしかない。



現在では火を起こしたり、風を起こしたりする程度の技術でしかない。


「魔術は意識、想像力」エアノアは、もう亡くなった祖母に言われた言葉を思い出す。

祖母もかなりの使い手であったらしい。魔術を使うと優しかった祖母を思い出し少し心が温まる。



授業から戻りエアノアは自身の机から教本を取り出す。

すると見覚えのない封筒 それは濃いすみれ色の小さな封筒であった。


不思議に思い、手に取ると赤インクで「エノエア」と流麗な文字で書かれてある。


「悪趣味…」と思ったが、次の授業があるため、封筒はそのままにして歴史学の教室に向かう。



魔術については天才的な才能を持っていたエアノアだったが、あくまで才能であって努力の方は苦手であった。


「エアノアさん、魔術があれだけできるならもう少し学業もできないと折角の才能が泣きますよ...」答案を返すしがら教官が口に出した。


「魔術の点数を振り分けてもらいえないでしょうか?」エアノアが返すと室内に笑い巻き起こった。


「はあ〜」教官は呆れながらこめかみを押さえる仕草をする。


周囲が驚嘆するほどの才がありながらも、エアノアには人懐っこい部分もあり同級生にも好かれていた。


午前の授業も終わり、机に残しておいた封筒の差出人を確認しようと封筒をひっくり返す 差出人は書かれていないが誰が少なくとも何処のの部分はわかった。


裏にはこれまた仰々しく蝋封がされていたがその印は間違いなく秘密結社の「首飾り会」のものであった。

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