暗躍
ホッジスは安堵していた。
先程の電話でバーネットの協力者に見当がついたらしい。
「さすがは、導師が信頼するだけはある。」そうは口にしたものの悔しさはある。
バーネットがこちらを信頼していないのかわからないが、最近は単独で行動しているようだ。
数ヶ月前の自身の失態から始まった、この事態にようやく収集の目処がついたのだ。
導師ではなく彼の指示であったことが多少腑に落ちないこともないが、今日は我慢しよう。
失敗しても言い逃れはできる。
これからどこに行くか。
尾行しろとの指示であった。
校門前には、それらしい女が一人いた。
「この女は確か」そうだ バーネットと面会に来たことがある。と目的のものを自身が取り逃していた事実に焦燥感と喪失感を持った。
それには若干怒りも含まれていることに、彼自身は気付いていない。
エアノアは部長は校門前で待っていたが、しばらく待っても来ないので帰ることにした。
「一緒に帰るようなこと言って」どうせ職員室で油を売っているだろう。
暗くなり初めていたので、幾分急足で歩いていると違和感に気づいた。
背後で同じ歩調で歩いている人がいるようである。
「えっ?なに」エアノアは恐怖を感じた。
治安は良い地域だし、今までにつけられる経験はなかった。
怖くて振り向くこともできない。
立ち止まるのも勇気がいる。
「気のせいかもしれない」
そう思いさらに歩調を上げる。
角を曲がると、背後の気配は無くなった。
「やっぱり気のせいか」
立ち止まり少し後方を確認する。
角から頭からフードを被った男が現れた。
咄嗟に視線を戻して、早足で逃げる。
「何?完全に怪しいじゃない!」すると今度は離れる気配がない。
どうしよう。
走って逃げようかと思うが、相手が走ってくることの恐怖を思うとどうしても行動ができない。
家に逃げ込もうか?警察に行こうか?
警察がいいと思うが距離がある。それに向こうが勘づいたら何をしてくるかわからない。
「何が目的なの?」
#############
「ちっ」
どうする ひとまずどこへ行くかだけでも確認するか?
でも家ではないのか?
なぜ彼はこんなことをさせる?
家ではないところが目的なのか?」
#######
「おい!!何している」後方から声がする。
エアノアは振り返るとフード男を追いかけるように部長が走っている。
フード男は部長の姿を見ると走ってエアノアの方に向かってくる。
「どうしよう」全身に緊張が走り、強張る感覚が広がる。
しかし、男はエアノアの脇を走り抜けていった。
危機が去ったとわかると力が抜けてへたり込みそうになる。
「大丈夫か?」駆け寄っていた部長が声を帰る。
「怖かった〜」エアノアはいつものように明るくしようと発した声は震えていた。
「すまん。顧問に捕まってしまって、教員室を出たときに校門に待っている姿があったので慌てて追いかけてきたんだ」
「まさか、追われているなんて」
「部長、ありがとうございます。」ようやく元の声に戻ってきた。
「歩けるか?念の為少し遠回りで帰ろう。つけられているかも」
付けられていると言われるとエアノアの表情が固くなる。
「いや、念の為だちゃんと家まで送っていく。」
「あの男、誰かわかるか?」
「わかりませんフードを被ってきて顔も見えませんでした。」
「そうか」
「でも、ズボンはうちの学生服だと思います。」
普通のスラックスではあるが、生地が厚く寸胴でダサい感じがエアノアの印象に残っていた。
「となるとうちの学生か」
「でも変装しているのかも」
と思ってが、変装するなら上着を着るかと言ってから気づいた。
「どうだろう、卒業生という可能性もあるか」
「目的はなんだろうな」
「ストーカーとかには見えなかった。」
「どうしてですか?」
「俺を見てすぐに逃げた。強い感情が絡んだ行動だと、そういう選択は取らないと思う。ある意味冷静だった」
「なるほど、そうなると部長がさっき言っていた。依頼者側のアクションということでしょうか」
「あいつが依頼者ではないんだろ?」
「ええ依頼者は女性ですから」
バーネットが仕掛けてきた?とすると、秘密結社の学生だろうか。でも、バーネットがそんなことをするだろうか?
「なるほど、依頼者側は複数いるのかもな」
部長に家の前まで送ってもらい別れた。
警察に相談するように言われたが、誰かもわからないし気が進まなかった。
それに。親には心配させたくなかったが、部長に「必ず相談しろ、牽制になる」と念押しされた。
仕方ない。翌日、案の定母には心配されたが警察に相談した。
警察の対応は、「犯人の顔がわからないと動けないですが、警戒情報と巡回は増やします。」との内容であった。
「牽制にはなるか」とつぶやくエアノアだった。
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