充足と焦燥


ホッジスは宿舎に戻りフードを外す、ひんやりして自身が相当に汗をかいていることに気がついた。


「何をやっているんだ!」自問する

あの女を追跡することに躍起になっていた数分前の自分の姿を思いだす。

以前に一度、バーネットに面会に来ていたことで焦りが出ていたことに、今気がついた。


電話が鳴る。


「期待しすぎていたようだ」声には失望より怒りが感じられる。

「申し訳ありません。」


「警察に入られると動きにくくなる」

「顔は見られていません。」


「まあいい、結果だけを見ればそれほど悪いわけではない。次は頼む」

「わかりました」


電話は切れた。


結果はそれほど悪くないとはなんだろうか。

有志は自分の他にもいるが、彼らが計画を進めることができたのであろうか?


計画...我々には偉大な目的がある。

第四の継承者の話を聞いた時の感動は今でも覚えている。


首飾りの秘密を知る継承者の存在について、導師より聞いた日のことを思い出す。

魔術省技術局局長が彼の肩書きであった。


貧困家庭出身で魔術も息詰まっていた彼にとっては雲の上のような存在から、必要とされた。

偉大な目的のために協力をしてほしい。


エアの「魔法」の復活


それはこの世界のバランスを書き換えこの国に富をもたらす技である。


魔法とは「この世の理」操る奇跡として区別される。


ものを燃やしたり、凍らせたり風を起こすような自然現象を操作するようなものは「魔術」と言われている。


過去に存在した「魔法」は物理法則を操作する。


亜空間を作り出したり、人の知覚を操作することも空間転移もできたという。


そして賢者エアは空間を操作し、時空を移動していたという伝説がある。


とある村が軍の大規模進行の標的にされていることを事前に知っており、避難させてという。


その言動は烈火のようだったらしい。確たる信念があったからそのような行動が取れたのだろう。それはこれから起こること知っているようであったと言われている。


その後もエアは、未来を予知しているようなことを口にしたと言われている。


もし、その伝説が本当に未来のことを知っての行動であればそれは凄まじい能力であり、現在の世界のバランスを一新しこの公国に利益をもたらすだろう。


貧困はなくなり、権威主義も刷新され本当の意味で開かれた社会になる。それが導師の言葉であり私の理想になった。


ついこの間までは、うまく運んでいた。

最初はこの目的に参加しているだけで満足だあった。


しかし、活動に参加する時間が増えるごとに導師の信任を得て責任を伴うような仕事が任せられるようになってきた。


一年前に秘密結社の総長付ホッジスになってからは、学園内では右に出るものはないとまで言われた。


そのことが、この活動を通じて最も大きな充足感であった。


「必要とされている。認めれている」そう思え誇らしかった。


しかし、今思うと、その充足感が最後かもしれない。ホッジスにしかできない仕事は責任を伴う。


成功して報告しても、安堵することしかなかった。



いつしか、窮屈な思いしかなかった。

それでも、あの忌々しい出来事まではまだ良かった。


もう取り返しがつかない。失敗はない。



そうホッジスは窓ガラスに浮かぶ自分の姿に決意を固めた。



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