第13話 競艇

 皆さんご存知だと思うが、競艇というのはボートレースのことだ。

 週末になると、父はスポーツ新聞に赤ペンで何やら書き込み、競艇の予想をしていた。

 迷っているときは「好きな番号を2つ言ってみろ」と私に言う。


「3と5」

「3かあ。うーん、きそうな気もするのう」

 などと呟く父を見ながら、当たったら何を買ってもらおうかと考えていた。



 よく若松のボートレース場にも連れて行かれた。

 最近は、女性専用ルームやカラオケルーム、キッズスペースなどもあるらしいが、昔はギャンブル好きのおじさん達が集まる、面白くもなんともない場所だった。


 観覧席の隅にはあちこちに「予想屋」が立っていた。予想屋というのは、文字通り、レースの着順を予想して客に売る人達のことだ。


 今は公認の予想屋がいるらしいが、当時はこそこそと取引していたから、もしかしたら違法だったのかもしれない。


 父はときどき予想屋に小銭を渡し、予想を書いた小さな紙をもらっていた。

 だが、予想なんてそうそう当たるものではない。

 他の予想屋が当てたと小耳に挟み「あっちで買えば良かった」と悔しがる父の姿を思い出す。

 

 母は母で「お父さんが損した分は取り戻す」と、本命狙いで父のマイナス分を着実に埋めていた。

 いつもは大人しい母が「大穴ばっかり狙うけ負けるんよ」と、どや顔で父を叱っているのがおかしかった。

 


――――――――――――――

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

ここでいったん完結とさせていただきますが、いつの日か、また再開するかもしれません。覚えてるうちに少しでも書き残せて良かったです。

最後に、いくつでもいいので☆評価をお願いします!(*´ω`*)






 

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昭和ノスタルジー 〜70年代の小さな町の商店街〜 陽咲乃 @hiro10pi

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