終わりの終わり

 この世に『絶対』はないとよくいわれるが、生き物はいつか(少なくとも総合的な肉体としては)死ぬという事実に間違いはない。惑星にせよ恒星のような物体もいつかは崩壊する。

 本作は、そんな事実を背景に逃れようのない状況が展開されていく。にもかかわらず平凡な日常が広げられる。暴動の類にも少しは触れてあるが、主人公には無関係である。

 そう、断末魔をあげるのは主人公ではない。読者なのだ。滅亡するのは読者一人一人が把握するところの本作における地球である。まことに澄みきった緊張美であり、作者一流の語彙センスがそれを盛り上げる。

 必読本作。

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