青年は神様への願いを通じて青春の痛みを学ぶ。切ない情感にあふれる短編。

主人公である「私」は受験に失敗した悩める青年です。
二度目の受験に挑む年の元旦に初詣に行くのですが、そこでかつて付き合っていた女性からの電話がかかってきて……。
その会話の中で生まれた葛藤から何を願えばいいのか迷い、そしてその結果から神様に願いをかけるということの意味を知ることになります。

「仏神を尊びて仏神を頼らず」とは宮本武蔵の言葉ですが、わかってはいても人は神様や目に見えない運命に身をゆだねて、「何もしていないのに何かをしているつもり」になってしまうものです。
そんな人の弱さが抒情的な文章でつづられています。
ちょっと切ないお話が好きな方にお薦めです。

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