アメリカはサウスダコタのホテルで働く作者様のエッセイという概要を目にし、「これは読まねば!」と開いてみたのがこの作品との出会いでした。
自分が行くことのできない場所で暮らす人々の営みって、テレビなどでも知ることはできますが、編集されちゃっていて良くも悪くも「綺麗なところ」しか見られないんですよね。
文章はライトでサクッと読める長さなのですが、その短い中には、思わず「えっ、マジっすか?」と口走りたくなるような奇想天外なホテルの裏側が紹介されています。
最後にはほっこりともさせてくれる本作。ちょっとした隙間時間にでも、お手に取ってみてはいかがでしょうか。
身についた感覚はとても根深く、その違いに直に晒される立場になった時、さながら滝行のような厳しさを感じるものだ。その落差や水量を推し量ったところで、身に降りかかるものが小さく軽くなるわけではない。それでもその差の生まれるところを見つめ、今日も滝壺に足を運ぶ。もちろん、いつもの時間に。
これが異国の地で、お子さんが学校に通っている間のことだというから、さらに驚かされる。
何事も自分を基準に考えると、違った感覚で振る舞うものを無意識に悪にしがちである。そこをあえて、自分の感覚からするとこう考えたり感じてしまう、そりゃため息だって出ますよ、と至極正直に語られるエピソードの数々。ここに作者様の物事に対する真摯な姿勢が見えて、とても好感が持てる。
実際には対価に見合わないと感じる労働(肉体的な負荷はもちろん、心理的にも大いに)を、そもそも続けるべきかどうかを悩まれたり、もうやってられない! と投げ出したい気持ちになったりすることは何度もあったかも知れない。
でもそれ以上に、乗り越え、適応しようとするエネルギーに満ちていて、続けているからこそ感じることができる光の粒をちゃんと見つけている。人の振る舞いに悩むからこそ、人の心に感動するのだと。
滝行の後、太陽に温められた岩の上で体を干しながら、なんでこんなに大変なことしているんだろうなあ、なんて時にクスリと自分のことが笑えてくるのに何故か頑張れる。そんな光景が目に浮かぶようで、頼もしく思えてしまうのだ。
そして、これもまた石の上にも三年では?(うまいこと言ったつもり)
異国の地で働いている方、お子さんを育てながら働いている方、何かと自分の都合に合わないと安易にブラックだと言っちゃう方、これから働く予定の方、長らく働いてきた方、そして今働き盛りの方、全ての人へ。
是非。
サウスダコタ州という名前は知っているが、私自身、どことすぐに言い当てられることもないし、もちろん、外国に行ったこともないから当然行った試しもないし、おそらく、死ぬまで行くことはないでしょう。
そんな地でのエピソードを、日本人の方から、こういう形で語っていただけるのは実にありがたいし、ためにもなる。
まさに、これこそが生活者として根を下ろした人なるが故の異文化体験。
私とは性別も年齢も何もかも違う方ではあるが、日本人で日本語をもって意思の疎通が可能であるということだけが、おそらくは唯一の接点。
その唯一の接点から、このような作品に出会えたことに、心から感謝したい。
だけど、私には、同じことは、出来ないなぁ・・・。
日本の田舎にも住めない者が、外国の田舎に住めと言われても、まあ、3日どころか2日ともたないでしょう(苦笑)。
私はね、こういうエッセイを読みたかったんですよ。海外で暮らしている方の日常というかね。雑誌とかテレビで見るような、オッシャレーな海外生活じゃない、リアルな日常、っていう。
作者様が暮らしてらっしゃるのは、まぁ、ほんとに申し訳ないんですけど、名前くらいしか知らないところでして、どの辺にあるのかなんかもさーっぱりで。
だけどその分わっくわくなんですよ。
ニューヨークシティーのアーバンなアレじゃなくて、もう本当にガチで全然わからないアメリカのどっかのお話なんですよ!
さぁ、お願いします!
と意気込んで読み始めたわけですが――
いやいやいやいや!
なんでそんなことになるんだよ!
おい、もっとしっかりやってくれよ!
もうツッコミの嵐で。
文化が違うと言ってしまえばそれまでなんですけど、その違いがでかすぎる!!
えっ、ちょ、嘘、同じ人間だよ?
どうしてそんなにルーズになれるのよ!
私が映画で見るようなアメリカンとはまた違うというか、あれもあれでたまに「うん?」て思うことはありましたけど、何でしょうね、あれは所詮映画だったんだな、って思ったりして。
文化の違いにショックを受けること間違いなしのエッセイです。ぜひ!
作者様はアメリカのサウスダコタにお住いの、子育て中ママさんです。
そこでのお仕事体験をエッセイにしておられるこの本作。
いや、ほんと、思う。
日本人基準で物事を考えちゃいけないな、と。
うちの地区にも最近外国人が増えまして。
お話したり、交流したりすることもあるんですが……。
お互い、文化が違うから、おっかなびっくりなところがありますね。
それが軋轢を生むのではなく、「へえ!」「あ、そうなんだ!」と、驚きながら、ちょっとずつ距離を縮めている感じです。
本作は、そんな距離感や、だからこそ気づく「日本人らしさ」をうまく表現されていて、とても興味深いです。
一話一話の文字数も無理が無いので、ぜひぜひ、異世界・異文化体験をお楽しみくださいませ。