概要
金平糖の甘い残り香に、微かに苦いインクの匂いが混ざった。
「おじいちゃん、ここって何の部屋?」
「おれの仕事部屋だ」
私が興味を示したのに気を良くしてか、祖父は座椅子から立ち上がった。杖をついた足でゆっくりと私を追い越して、居間と仕事部屋を隔てる襖を開ける。
途端に流れ出した空気はずっしりと重く、むせ返るようなインクの匂いを孕んでいた。深く息を吸い込むと、鼻の奥がじんと苦くなった。
***
かつて印刷業を営んでいた祖父と、その残り香が好きだった孫のお話。
「おれの仕事部屋だ」
私が興味を示したのに気を良くしてか、祖父は座椅子から立ち上がった。杖をついた足でゆっくりと私を追い越して、居間と仕事部屋を隔てる襖を開ける。
途端に流れ出した空気はずっしりと重く、むせ返るようなインクの匂いを孕んでいた。深く息を吸い込むと、鼻の奥がじんと苦くなった。
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かつて印刷業を営んでいた祖父と、その残り香が好きだった孫のお話。
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