歴史の論文のテーマにいかが?…なんて。

最初の項を読むだけでもう、黄ばんだページと退色した革の装丁の書物が見えてくる(当レビュー筆者は勝手に、緑色の装丁だと思っている)。古びた書物をめくると、それはひとりの男性の手による、内乱を中心とした回顧録。だから完全に客観的ではなく、ときに淡々と、ときに苦々しく、筆者(となった人物)の心情が透けて見える。筆者が行動をともにした、ある人物の言行録という見方もできる。本文の後に付けられた注釈もまた奥深く、ときに本文への容赦ないツッコミがあったりする。そして書物形式ならではの仕掛けも。
時間と余裕があるときに、簡単な地図と人物相関図と概略年表をメモしながら、じっくり読みふけりたくなる。ネット小説でありながら、重厚な架空歴史書。もしも書籍化するなら、ぜひとも退色した革の装丁(風)の表紙で。

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