母娘三代にわたる、それぞれの人生が描かれていきます。
『生きる』と一言で言いますが、それは予想もできないことの連続です。
思うようにならない日々の中、追い打ちをかけるように起こる悲劇。
自然災害、悪意による人災。どちらにも、人を絶望に突き落とす狂気があります。
どん底をのたうち回る苦しみの中でも、わずかな光を求めて這い上がる姿に、力強さと勇気をもらいました。
また、恋に、出産に、介護にと人生の節目の度に揺れ動く感情も赤裸々に描かれています。
でも、どんな自分をも自分で受け入れて、周りの人を大切に思う心こそが、真の愛なのだろうなと、感じました。
辛くても読み進めた先に光が見えるとても重厚な作品、お勧めです。
昭和、平成、令和。男女が出会い、新たな命が生まれ、時代を経てつながっていく家族。
この世に命が生まれる。大切な相手と出会い、愛を育み、また新たな命がこの世に生み出される。当然にも思えるこれらの輪廻が、どれほど尊いか。読み終えて、そんな余韻が深く残る物語です。
大学で絵画を学び、恋には臆病だった主人公、櫻絵。彼女の身の上にある夜起こった残酷な出来事により、彼女の人生は激しく動き出します。
辛い出来事を経験して初めて知る自分自身の本心。自分が誰を必要としているか、誰と共に生きたいか。こうして櫻絵は、これまでなかなか踏み出すことのできなかった真剣な恋に向き合います。
櫻絵と母親の感情の衝突と和解。櫻絵を苦しめる過去の心の傷、それを優しく包み込む夫。長い苦しみの末に二人が予想もしない形で迎える小さな命。その命の驚くべき出自——。様々な「家族の感情」が生々しいほどリアルに絡み合い、深い痛みや喜びを生み出していきます。
物語の根底に常にあるのは、家族や肉親への絶え間ない細やかな愛情です。茅葺の家の庭を彩り、そこに住む家族を暖かく見守るしば桜。その小さな花たちが送る優しいエールは、何世代もの子供たちの心の中に静かに届いていきます。
家族をいつでも深く思い合うこと。一言で言うと簡単ですが、これほど難しく、また尊いことはないのだと、作品を読み終えて深く心に刻まれます。
様々な色合いを帯びた家族の愛情がぎっしりと詰まった、ずしりと重みのある物語です。ぜひ、ご一読ください。
大正から令和へ。波瀾万丈な人生を歩む女性たちの、傷を抱えながらも苦難を乗り越え懸命に生き抜く姿が痛々しくも美しい。
母娘三代、それぞれに愛情深い生原家の女性たち。男女の恋愛から夫婦愛、親子愛、家族愛。それはときに、自らの大きすぎる愛に翻弄されているようにも見えるほど。衝撃の展開もあり、ハラハラしどおしです。
そんな彼女たちをずっと見守り励まし続けてくれたのは、白と薄桃のしば桜でした。
流麗な文体に独特な台詞まわし。彩豊かに綴られる物語は、唯一無二。この作者様にしか作り上げることのできないものだと思います。ぜひこの世界観に浸り、酔いしれながら、しば桜と共に彼女たちの幸せを見守ってあげてください。
ラストでは新たな色のしば桜も仲間に加わり、また、しば桜の声を聞く不思議な力も新たな代に引き継がれてゆくのです。明るい未来へと繋がるようで微笑ましく、温かな気持ちになれます。
わたしはいすみさんの奥ゆかしい文章がとても好きで今回のカクヨムコン作品もとても楽しみに拝読しました。
テンポよく重ねられていく会話、ハッとさせるような地の文、宝石のように散りばめられた言葉の美しさ、とてもお見事で「ああ、やっぱりいいなあ」と感銘しています。
冒頭に少し触れますと、生原家の祖父母の関東大震災の出会いから始まります。
二人の間にさくらさんが生まれ、やがて孫の櫻絵さん(主人公)が生まれ、脈々と引き継がれる一家の歴史をしば桜は見守ってきました。
人生楽しいことばかりではないです。笑っていられないとき、悲しみに押しつぶされそうなとき、しば桜はそっと寄り添い櫻絵さんを励ますのです……
『愛』って言葉にすると照れくさいものですけれど、この作品を拝読して素直に言えるのは愛は素晴らしいものだということです。夫婦の愛、親子の愛、家族の愛。櫻絵さん自身が迷いながらも言葉を荒げながらもまっすぐでチャーミングな愛情を持って生きてこられたのではないかなと、だからこそ大きなものを読者の心に残すのだと感じています。そうなんです、櫻絵さんとても可愛い方なのですよ。
するすると読めて読みやすいですし、とてもいい作品だと感じていますので、多くの方におすすめしたいです。
親子三代にわたる家族の物語、ぜひ読まれてはいかがでしょう(*´ω`*)
大正から令和にかけて、母娘3代に渡って引き継がれていく愛を描いた物語です。
本作はとりわけ、「家庭の中の女性」の人生にスポットを当てているように感じました。
運命の男性との出会いの傍らに、いつもしば桜がありました。
彼女らの家の庭に咲き、時に語りかけ、人生の節目節目を見守ってきたしば桜。
まるで無償の愛を象徴するかのようです。
時代の流れと共に、女性をとりまく価値観は変わっていきます。
それでも、家族を愛することは、どんな時代でも素晴らしいことです。
主人公・櫻絵さんの伴侶となる男性・寧くんの柔軟な価値観がとても現代的で、「家庭の中の女性」をメインにした話であっても決して古臭くならないバランス感が絶妙でした。
しば桜の声を聴く役割は、さらに次の世代へ。
家庭の中で育まれた愛から、次の愛が生まれる。
明るい未来が見える、とても温かく幸せなラストシーンでした!
大正から令和まで、生原家に生まれた女性たちを中心とした物語です。
中でも主人公は、櫻絵。祖母のフク、母のさくらか受け継いだ強かさで生きていきます。
強かとは言え、心身剛健ということはなく。嵐の只中を行くような人生に、めげることがありません。一度は躓きかけても、二度と転びかけても。必ず温かな光の射す方向へ、再び歩み始めます。
落ち着きのある美麗な日本語で綴られた文章。その中にも、登場人物それぞれのユニークさが描き出されます。
喜怒哀楽に満ちた世界が、この先どんな結末に向かうのか。楽しみに連載を追うことと致しましょう。
大切なしば桜たちに語りかける主人公、櫻絵。
彼女の祖母の代から語られる女たちの人生は、誰もが激動の時代を懸命に生きてきた証。
櫻絵もまた、人の愛や裏切りに翻弄されながら、しば桜たちとともに一歩一歩を踏み出して生きてゆく。
素朴で優しい文章ながら、語られる彼女たちのドラマの深さには思わず唸らされます。
美しい言葉、可愛らしい言い回しなどが、櫻絵の素顔を生き生きと引き立てています。
決して派手さのない設定ながら、読むごとにどんどん惹きこまれてしまう、その筆力はどこをとっても見事としか言いようがありません。
櫻絵の生き方を、心から応援したくなります。しば桜のように。
深い人生を謳うドラマをお探しの方、ぜひこちらをお手に取ってみてください。