異世界生物論

私がある事情から世界線を跨いでおおよそ5年と少し。元世界で言うファンタジー小説を煮詰めて固めたようなこの世界で、私は現在生物研究所の職員を生業としている。

日本にいた頃とのギャップで苦しんだ日もあったがそれも過去の事、今の私はこの世界の奇妙な生物たちの虜になっている。
気候、地形、環境の違い、何より「魔法元素」の存在。
彼らの生態は地球の生物達とは完全に別物と言えるが、同様の合理性がある。

私はこれまでの研究記録を元にして、私なりの考察文書を作ることにした。
地球人としての考察だから学会に発表する事は出来ない。
すなわちこの世界に唯一の「異世界生物論」である。