異世界生物論

@sabamiso7go

1.はじめに

この文書は、私がハイランドのエル・クライド大学附属生物研究所にて研究員として記録してきた研究内容を、種族ごとにまとめて考察文章にしたものである。


まずは明言しておくが、この文書が学会及び世間に知られる事は無いであろう。

これが解放される時は、少なくとも筆者である私、シゲル・アカサカの死んだ後である。生きている間は誰にも見せる気はない。

何故ならこの考察は私が「異世界人」としての視点から行うものだからである。


私は「地球」という巨大な土地の「日本」という国に生まれた。しかし5年前私はある現象に巻き込まれてこのフェラデルシア大陸に転移してきたのだ。

「地球」はこちらの世界とは違い機械工学が発達し、鉱物と電気と火を駆使して人々は日常生活を不自由なく過ごしている。これは地球に魔法元素が存在していない事が原因であり、その影響から幻子工学や魔法技術の代わりに機械工学が発展しているのである。

生物の生態系も全く異なるため、私がこの文書で記すだろう考察も、私の地球での常識を元にしたものになる。


この文書は私の異世界人としての証である。

私は地球に戻る事はもう叶わない。この世界に骨を埋める事になる。

よってこれは以降の私が「自分は過去、地球にあった」という事実を忘れないための、元・地球人としての残滓になるだろう。

私のための、私が記す記憶の楔である。


この文書が誰にも知られず、この地に残り続ける事を切に願う。


                赤坂 茂







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