新しい日常
ここは広い中庭、緑溢れる憩いの場。レイヴンの居城の一角、その中心に置かれている噴水に一人の少年が腰掛けていた。
零次だ。彼は黒い着物に金装飾を邪魔そうにいじりながら空を眺めていた。
あの事件から数日。こちらの地球での生活にも慣れてきたが、レイヴンの孫として行政に携わるのは苦しい。今も秘書の目を盗んで休憩中だ。
「あ、お兄ちゃん」
ふとノアの声が聞こえ振り向く。ノアの後ろにはランもいる。彼女の手にはタブレットのような端末機がある。
「もしかしてまたサボり?」
「休憩だ。てかつい先日まで高校生だった俺に仕事を押し付け過ぎだろ。いくら教わりながらでもさ」
「ノアはこなしているぞ」
「育ちが違うだろ……」
ランの言う通り、彼女からすれは軽い仕事だ。それでも零次とは受けてきた教育が違う。慣れもあるし、彼女の方が上手なのは当たり前だ。
「……けどまぁ、何とかやってるよ。向こうの地球との関係も修復しないとな」
事件はまだ完全に解決したとは言えない。勘助のスポンサー達を逮捕しきれておらず、政府もアンフォーギヴンや事件の真相を世間に公表しないようにしている。
隠されているのはあまり良い気分ではないが、アンフォーギヴンが世間に受け入れられるのも難しく、毘異崇党の戦いがマッチポンプだと知られれば……とうなるのか想像するのは容易い。
現在は毘異崇党の本拠地を破壊、ブルーを除くアームズブレイヴァー四名の戦死をもって戦争の終結が告げられている。
この状況を好ましく思わない者も多い。だからこそ賠償請求、関係者の引き渡し交渉の真っ最中だ。レイヴンも老体にむち打ち働いている。
きっとこの問題はすぐに終わりはしないだろう。だが零次も解決を望んでいる。
「うっし、休憩終わり。執務室に戻るか。そういやノア達はどうしたんだ?」
「ああ、そうそう。実はお兄ちゃんに用事があったの」
そう言うとノアはランから端末機を受け取り操作する。
「俺に?」
「そうそう。実はお見合いの話しを持ってきたのよ」
零次の思考が停止する。まだ十代の自分がお見合い? そんな馬鹿なと思いながらも、こちらの状況を思い出す。
出生率が低下しているアンフォーギヴンは十代で結婚するのも珍しくない。少しでも早く、多くの子を成そうと早く結婚する者が一般だと聞いた事がある。
「私はともかく、お兄ちゃんは子供作り易そうだからね。一族の為にも頑張って貰わないと。あ、一番のおすすめはランだから」
「はい!? ちょ、私?」
ランが驚き狼狽する。彼女もお見合い相手であるのは知らないようだ。
「えー、私ランと家族になれるの嬉しいけどな。ねえ?」
同意を求めるように零次に微笑む。しかし彼からすればこんなのは想定外、まだ結婚なんて柄じゃない。
「いや、俺にはまだ早いって……」
「いやいや。こっちの文化なんだから従わないと。郷に入ってはなんとやらよ」
ゆっくりと後退りながら、懐からワイルドユニットを取り出した。
「悪いがその話しはまた今度で!」
二人から逃げるように走り出し、ユニットを腰に巻き鍵を刺し込んだ。
「
戦隊のブラックですが、ヒーローをクビになったので怪人になります 村田のりひで@魔法少女戦隊コミカライズ決 @ymdhdnr
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます