あなたが手に取るのは、茶色く古びた古書か?いいえ、最新鋭のネット機器。

この文章を形容する語彙力を、完璧に持ち合わせていないことが悔しい。

一書き手として、尊敬と嫉妬の的としてしまうような作品である。

まさしく純文学の美しく淑やかな言葉選びは、小説を読む愉しさをこれでもかと体言している。

そして、驚くべきはフィクションとノンフィクションの狭間である作風。
著者がどこまでを体験し、どのように解釈し、どのように味付けをされているのか。

そのパンパンに膨れ上がった脳みそを垣間見たかと思えば、やっぱり着いてけないや。とすら感じさせる引力とカリスマ性、読者への提議が絶妙。

飴と鞭といったイメージか。

そして最新話ははっきり言って異常。

物書き、芸術に対する圧倒的な熱量と圧とパワー。

そのパワーをもはや暴力的だとさえ思う読者もいるかもしれない。

だが、それはあまりに早計だ。

一見無茶苦茶にも見えそうな論拠を、読めば読むほど納得されられる筆力と論理性、キャラクターの印象づけの仕方は正直真似出来ない。

そして、何よりこれを書かれている著者もまた小説家であるのだ。

自己を含む物書きの内面や性質を俯瞰し、噛み砕いた上で鋭利なナイフに仕上げているという。

寧ろ、だからこその斬れ味なのかもしれない。

デリダという哲学家は語った。
『テキスト(何か)を批判するには、テキスト(何か)の中から』という脱構築の思想を。

まさに小説家という内部から、物書き・ひいては芸術家に対して一定の持論を述べた、恐ろしくドライでありながら、真っ直ぐなお話になっているのだと思う。

ここまでの文圧を、Web媒体から感じる日が来るとは思っていなかった。

自分は、古びた茶色の古書を持っていたのでしょうか?

いいえ、間違いなく最新鋭のiPhone12を持っています。


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