吐瀉物にまみれ、牙を剥きながら生きていく

人の心の働きに鋭く目を向け、真摯に向き合った小説。恋愛・ラブコメ、青春といった要素もありますが、私が最も魅せられたのはそこでした。
キャラ達の性格やテンポの良いやり取りにクスクス笑え、爽やかな青春を感じられる……でもその「いい雰囲気」が一変。無防備な読者を容赦なく突き刺すのは、外面の内に仕舞い込まれた、キャラ達の痛い程の思いです。
一筋縄ではいかない心というものが、角度を変え、光の当て方を変えて描かれ、読者は今まで見えていなかったものに気づかされ、何度もハッとさせられます。
それらを表す言葉は的確で、心がそうなるに至った筋道にも非常に説得力があります。
また、文章が美しいのもこの作品の大きな魅力だと思います。整っている・上手い、というのももちろんですが、語句が選び抜かれており、とにかく表現が美しいのです。

高校生の全力の思いや、他人と関わることで徐々に人が自分の深部、生き方を変えていく様がここにはあります。
是非たくさんの方に読まれてほしいです!

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