投影、儀式、その向こう側

赤札の貼られた欠陥品は「いらない」もの。でも、必要な環境や養分がバランスよく揃えば、生き延びる。
毒は薬。効果は症候群。呪いは祈り。
傾きすぎれば、腐って枯れる。
無意識に自分をすり減らしてしまっていたら、そのことに意識を向ける。自分の意思は、己の内側を助け得る。
序盤で感じたそのようなことが、ずっと頭にありました。

感想をハッキリと言葉にはめたくない作品だなぁと思います。だから、受け取ったものは自分だけのものにして、大事に両手で包み込むことにします。

目に映るもの、手に取るものの描写が詳細で生々しかったです。物語はじわじわと染み込んできて、時間差で「あっ」となることもありました。このレビューを書いている最中も「赤札と禁色、聴色」について考え始めましたし、レビューを書いた後もまたなると思います。
「スライスされた丸鉛筆の断面のようなもの」とか「ばつばつとした音」とか。好きだな、と思う表現が本当にたくさんあって、そういったお気に入りをせっせと心にしまい込んでいくのも幸せでした。この作品を読もうと思ったのも、キャッチコピーがすごく素敵だと思ったからでした。

作品から伝わってくる気迫がすごくて圧倒されました。
この作品は「実話」だと思います。

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